結論から書きます。在宅薬学総合体制加算は、令和8年度改定で点数が引き上げられ、加算1は30点、加算2は個人宅(単一建物診療患者等が1人の場合)が100点、施設等が50点になりました。 加算1は在宅業務の基本的な体制(緊急時対応・研修・麻薬小売業者免許など9項目の共通基準)を評価し、加算2はこれに薬剤師の人員体制と訪問実績を上乗せして評価します。無菌製剤処理の設備は、加算2の実績要件の選択肢の一つであって必須ではありません。
この記事は、地方厚生局の届出様式「在宅薬学総合体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」(様式87の3の5)、調剤報酬点数表の在宅患者訪問薬剤管理指導料(区分15)と調剤基本料(区分00)の通知、令和8年の疑義解釈(問5、令和8年9月2日公表分)、薬事日報「【2026年度改定】在宅薬学総合体制加算とは?算定要件・疑義解釈・施設基準まとめ」(2026年9月3日)にもとづいています。
1. 加算1・加算2の点数
| 区分 | 令和8年度改定後 | 対象 |
|---|---|---|
| 在宅薬学総合体制加算1 | 30点 | 在宅業務の基本的な体制を評価 |
| 在宅薬学総合体制加算2 イ | 100点 | 単一建物診療患者又は単一建物居住者が1人の場合(個人宅) |
| 在宅薬学総合体制加算2 ロ | 50点 | それ以外の場合(施設等) |
算定要件は、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、または介護保険の居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者等が提出する処方箋を受け付けて調剤を行った場合です。加算2は加算1の基準をすべて満たした上で、追加の基準を満たす薬局だけが届け出られます。
2. 加算1・加算2共通の施設基準
届出書添付書類(様式87の3の5)が挙げる共通基準は次の9項目です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| (1) 届出 | 在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の地方厚生(支)局長への届出 |
| (2) 緊急時等の体制 | 開局時間以外の時間における在宅業務に対応できる体制の整備 |
| (3) 自局・グループでの周知 | 在宅業務実施体制を自局および同一グループで周知していること |
| (4) 地域での周知方法 | 地域の行政機関または薬剤師会等を通じた周知 |
| (5) 体制の整備状況 | 在宅業務に関する職員等研修の実施実績・計画、外部の学術研修の受講 |
| (6) 衛生材料の供給体制 | 医療材料・衛生材料を供給できる体制の整備 |
| (7) 麻薬小売業者免許 | 免許を取得し、必要な指導を行えること |
| (8) かかりつけ薬剤師の届出 | 服薬管理指導料の注1(かかりつけ薬剤師指導料)に係る届出 |
| (9) 訪問実績 | 直近1年間の訪問薬剤管理指導の実績回数(施設在宅等を含む)が48回以上 |
(9)の48回以上という実績要件は、令和8年度改定で24回以上から引き上げられたものです(薬事日報)。在宅業務を始めたばかりで実績が少ない薬局は、まず加算1の届出から検討することになります。
3. 加算2に固有の施設基準
加算2は、共通基準に加えて次を満たす必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 単一建物診療患者等の実績 | 在宅患者訪問薬剤管理指導料1・在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料・在宅患者緊急時等共同指導料・居宅療養管理指導費等の実績回数を記載 |
| 実績の水準 | 上記の合計が年240回以上かつ訪問薬剤管理指導の実績全体の2割を超える、または年480回以上かつ1割を超えるいずれか |
| 薬剤師の人数 | 在籍する保険薬剤師数(常勤換算)を記載 |
| 高度管理医療機器の販売業許可 | 医薬品医療機器等法第39条第1項の許可 |
| 実績区分(いずれか該当するものに○) | ア 麻薬指導加算等の実績10回以上/年、イ 無菌製剤処理加算の実績1回以上/年、ウ 小児在宅患者への訪問薬剤管理指導6回以上/年 |
薬剤師の人員体制については、令和8年9月2日公表の疑義解釈(問5)が、「常勤換算で3名以上の保険薬剤師が勤務し、原則として開局時間中は2名以上の薬剤師が常駐すること」という基準の解釈を示しています。ただし、週45時間以上の開局(平日8時間以上、土曜日または日曜日は一定時間以上)を行い、薬局外の薬剤師が在宅患者の急変等に対応できる体制を整え、薬局内の薬剤師による処方箋受付体制を確保していれば、一部の時間帯は薬剤師1名でも差し支えないとされています。常時2名以上の確保が難しい小規模な薬局は、この代替要件を満たせるかどうかを先に確認してください。
4. 実際に加算2を届け出る手順
- 直近1年間の在宅業務の実績を集計する:訪問薬剤管理指導料・緊急訪問薬剤管理指導料・緊急時等共同指導料・居宅療養管理指導費等の算定回数を、単一建物診療患者等ごとに整理する
- 実績要件のア・イどちらを満たすか確かめる:240回以上かつ2割超、または480回以上かつ1割超のいずれかを確認する
- (5)のア・イ・ウのどれで届け出るか決める:医療用麻薬の指導実績、無菌製剤処理加算の実績、小児在宅患者への対応実績のうち、自局の強みに合うものを選ぶ(複数該当する場合はすべてに○を付けられる)
- 薬剤師の人員体制を確認する:常勤換算3名以上、開局時間中原則2名以上常駐(または疑義解釈の代替要件)を満たすか確かめる
- 高度管理医療機器の販売業許可を確認する:取得していない場合は先に許可を得る
- 様式87の3の5を作成し、地方厚生(支)局に届け出る
5. 落とし穴
- 加算2を、無菌製剤処理の設備がないという理由だけで諦めていた:医療用麻薬の指導実績や小児在宅対応の実績でも満たせます
- 薬剤師2名以上の常駐を、代替要件を知らずに難しいと判断していた:週45時間以上の開局など条件を満たせば、一部時間帯は1名でも可能です
- 加算1の訪問実績48回以上を、改定前の24回以上の基準で見込んでいた:令和8年度改定で引き上げられています
- 麻薬管理指導加算と在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を混同していた:いずれも在宅薬学総合体制加算の実績の数え方に関わりますが、算定要件が異なります
6. まとめ
- 令和8年度改定で、加算1は30点、加算2はイ(個人宅)100点・ロ(施設等)50点に見直された
- 共通の施設基準は9項目。届出・緊急時体制・周知・研修・衛生材料供給・麻薬小売業者免許・かかりつけ薬剤師の届出・訪問実績48回以上
- 加算2はさらに、薬剤師の人員体制、単一建物診療患者等への訪問実績、麻薬指導・無菌製剤処理・小児在宅対応のいずれかの実績を満たす
- 無菌製剤処理の設備は必須ではなく、実績区分の選択肢の一つ
在宅訪問の立ち上げ方は「薬局の在宅訪問の始め方」、医療保険と介護保険の使い分けは「居宅療養管理指導と在宅患者訪問薬剤管理指導の違い」で整理しています。施設基準の詳細や個別の判断は、所在地の地方厚生(支)局に確認してください。
参考資料
- 東北厚生局「在宅薬学総合体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」(様式87の3の5): https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tohoku/r8-t87-3-5.pdf
- shirobon.net「調剤報酬点数表 区分00 調剤基本料(令和8年)」: https://shirobon.net/medicalfee/latest/chozai/r08_chozai/r08c_sec1/r08c1_Y000.html
- shirobon.net「令和8年 疑義解釈 問5(在宅薬学総合体制加算)」: https://shirobon.net/doubt/r08/012-q005-00-00-c/
- 薬事日報「【2026年度改定】在宅薬学総合体制加算とは?算定要件・疑義解釈・施設基準まとめ」(2026年9月3日): https://www.yakuji.co.jp/entry131444.html