結論から書きます。薬局の薬剤師が患家を訪問して行う薬学的管理指導は、要介護・要支援の認定がある人は介護保険の「居宅療養管理指導」、認定がない人は医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」で算定するのが原則です。業務の中身はほぼ同じですが、報酬の単位、回数の上限、ケアマネジャーへの情報提供の求め方、事前の手続きが違います。取り違えると返戻や指導の対象になるので、訪問の開始時と毎月の請求前に、介護認定の有無を確かめる仕組みが必要です。

この記事は、厚生労働省「保険調剤の理解のために(令和8年度)」、告示の調剤報酬点数表、「介護報酬の算定構造」(令和8年6月改定箇所)、e-Gov法令検索の健康保険法・介護保険法・運営基準にもとづいています。在宅訪問の立ち上げの手順は薬局の在宅訪問の始め方で整理しています。


1. どちらの保険で算定するか

1-1. 給付調整の原則

健康保険法第55条第3項は、療養の給付などについて「同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない」と定めています。「保険調剤の理解のために」は、これを要介護被保険者等については原則として介護保険給付が医療保険給付より優先されると説明しています。

ただし、別に厚生労働大臣が定める場合(「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」平成20年厚生労働省告示第128号、いわゆる介護調整告示)には、要介護者等でも医療保険から給付できます。

患者の状態算定するもの
要介護認定あり(在宅)介護保険:居宅療養管理指導費
要支援認定あり(在宅)介護保険:介護予防居宅療養管理指導費
認定なし(在宅で通院困難)医療保険:在宅患者訪問薬剤管理指導料
要介護者等で介護調整告示に当たる場合医療保険で算定できるものがある

介護調整告示の個別の項目は、訪問のたびに告示と留意事項通知で確かめてください。この記事では、確かめた範囲の原則だけを扱います。

1-2. 月の途中で認定を受けた場合

令和8年3月27日の通知(老老発0327第2号・保医発0327第4号)を引いた「保険調剤の理解のために」の説明では、要介護被保険者等となった日から、同じ傷病についての給付が医療保険から介護保険に変わります。1月あたりの算定回数に制限がある場合は、両方の保険の給付を合算した回数で制限を考えます。

認定の申請中の人は、結果が出るまでどちらになるか決まりません。申請中であることを把握したら、結果と認定の有効期間の開始日を確かめて請求を分けます。

2. 報酬の比較

項目医療保険:在宅患者訪問薬剤管理指導料介護保険:居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師)
単一建物で1人650点518単位
単一建物で2〜9人320点379単位
それ以外290点342単位
情報通信機器を用いる場合服薬管理指導料4のロで算定(令和8年度改定で一本化)46単位
回数の上限服薬管理指導料4のロと合わせて月4回月4回
がん末期など週2回かつ月8回(末期の悪性腫瘍・注射による麻薬の投与・中心静脈栄養法)週2回かつ月8回(がん末期の患者、中心静脈栄養患者、心不全や呼吸不全で麻薬注射剤を使用する患者。算定構造の注)
麻薬・特別な薬剤麻薬管理指導加算100点特別な薬剤の投薬が行われている利用者への指導+100単位
医療用麻薬持続注射療法250点+250単位
在宅中心静脈栄養法150点+150単位
乳幼児・小児乳幼児加算100点、小児特定加算450点(算定構造に同様の加算の記載なし)

点数と単位数は、医療保険が告示の調剤報酬点数表、介護保険が「介護報酬の算定構造」(令和8年6月改定箇所)によります。医療保険の点数は1点10円です。介護保険の単位を金額に換える単価は、この記事では確かめきれなかったので扱いません。

医療保険の「単一建物診療患者」と介護保険の「単一建物居住者」は、どちらも同じ建物に住む人のうち、その薬局が訪問して算定する人の数で区分する考え方です。医療保険では、同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合や、建物の戸数の10%以下の場合などに「1人の場合」で算定する特例があります。

3. 手続きと運営の比較

項目医療保険介護保険
事業の開始別紙様式3で地方厚生(支)局に届出保険薬局の指定で居宅療養管理指導の指定があったものとみなされる(介護保険法第71条)
事前の説明患者の同意、時間外の連絡先の文書交付重要事項を記した文書を交付して説明し同意(運営基準第8条の準用)、時間外の連絡先の文書交付
規程運営規程(運営基準第90条)
指導の根拠医師の指示にもとづく薬学的管理指導計画医師・歯科医師の指示にもとづき薬剤師が策定した薬学的管理指導計画(運営基準第89条第2項)
医師への報告訪問結果を文書で情報提供診療記録を作成し、医師・歯科医師に報告
ケアマネジャー必要に応じて医療関係職種に情報提供必要な場合や求めがあった場合、居宅サービス計画の作成などに必要な情報提供・助言。原則サービス担当者会議で、難しければ文書
交通費患家の負担利用者から受け取れる。あらかじめ説明し同意(運営基準第87条)
距離16km超は特殊の事情がある場合を除き算定不可(運営規程の通常の事業の実施地域で定める)

4. 緊急時の訪問

医療保険には、計画的な訪問とは別に、医師の求めで訪問した場合の在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料があります。

  • 1:計画的な訪問薬剤管理指導の対象疾患の変化などに関する訪問
  • 2:計画的な訪問の対象になっていない疾患の変化などに関する訪問
  • 1と2と服薬管理指導料4のハを合わせて月4回まで。末期の悪性腫瘍や注射による麻薬の投与が必要な患者は原則月8回まで

要介護者等の緊急訪問を医療保険で算定できるかは、介護調整告示で確かめる必要があります。なお、居宅療養管理指導費を算定した日は、調剤に係る在宅患者緊急時等共同指導料は算定できないとされています。

5. 同じ月の他の点数との関係

在宅で訪問している患者は、外来の点数と重ねて算定できないものがあります。「保険調剤の理解のために」から主なものを挙げます。

在宅で算定している月算定できないもの
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定した月服薬管理指導料(4のロ・4のハを除く。計画に係る疾病と別の疾病の臨時の処方箋は除く)、外来服薬支援料1、服薬情報等提供料
在宅患者訪問薬剤管理指導料・居宅療養管理指導費を算定している患者かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(同月)

6. 毎月の請求前のチェックリスト

  • 訪問している患者全員の介護認定の有無と有効期間を確かめた
  • 月の途中で認定を受けた人の、切り替わりの日を確かめた
  • 同じ建物で算定する人数を数え、単一建物の区分を確かめた
  • 月4回(がん末期などは週2回かつ月8回)の上限を超えていない
  • 医療保険で月2回以上算定する人は、週1回を限度にしている
  • 医師への報告を文書で行った
  • 介護保険の利用者について、ケアマネジャーへの情報提供(会議または文書)を行った
  • 同じ月に算定できない外来の点数を外した

7. 落とし穴

  • 認定の確認を初回だけで済ませる。認定は更新や区分変更があります。毎月確かめる仕組みにしてください。
  • ケアマネジャーへの情報提供を省く。介護保険では、ケアマネジャーへの情報提供・助言は運営基準に定められた方針です。サービス担当者会議に出られないときは文書で行います。
  • 医療保険の距離の制限を忘れる。16kmを超える患家は、特殊の事情がある場合を除き医療保険では算定できません。
  • 重要事項の説明をしないまま介護保険で請求する。介護保険の提供開始前には、重要事項の文書の交付と同意が必要です。

8. まとめ

  • 要介護・要支援の認定がある人は介護保険の居宅療養管理指導、ない人は医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料が原則です(健康保険法第55条第3項)。
  • 薬局の薬剤師の居宅療養管理指導は、1人518単位・2〜9人379単位・それ以外342単位・情報通信機器46単位で、月4回が限度です。
  • 医療保険は1人650点・2〜9人320点・それ以外290点で、服薬管理指導料4のロと合わせて月4回です。
  • 介護保険では重要事項の説明と、ケアマネジャーへの情報提供(原則サービス担当者会議)が求められます。

参考資料