結論から書きます。保険薬局の収支は、「収益の約9割が保険調剤収益、費用の6割超が医薬品等費、2割弱が給与費、残る利益は5%前後」という形をしています。第25回医療経済実態調査では、法人の保険薬局1施設あたりの損益差額率は前年度4.9%でした。薬剤料は売上に大きく載りますが、同じだけ仕入れの費用もかかるため、収支を読むときは「技術料・薬学管理料」と「薬剤料」を分け、処方箋1枚あたりの技術料と給与費の比率を毎月追うのが基本です。

この記事は、中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月26日公表)、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」、告示の調剤報酬点数表、「保険調剤の理解のために(令和8年度)」にもとづいています。


1. 調剤報酬はどう組み立てられているか

収支を読む前に、売上の中身を分けておきます。調剤報酬点数表(令和8年度改定後)の構成は次のとおりです。

主な項目収支の上での性質
第1節 調剤技術料調剤基本料、薬剤調製料、各種加算(地域支援・医薬品供給対応体制加算、電子的調剤情報連携体制整備加算など)薬局の体制と調剤行為への報酬。粗利に近い
第2節 薬学管理料調剤管理料、服薬管理指導料、かかりつけ薬剤師の評価、在宅患者訪問薬剤管理指導料など対人業務への報酬。粗利に近い
第3節 薬剤料使用薬剤料(薬価にもとづく)仕入れの費用と対になる売上
第4節 特定保険医療材料料材料価格を10円で割った点数仕入れの費用と対になる売上
第5節 その他(新設)調剤ベースアップ評価料、調剤物価対応料賃上げ・物価への対応分

点数表の通則は、投薬の費用を第1節から第3節までと第5節の各区分の点数を合算して算定するとしています。

1-1. 薬剤料は「薬価」で決まる

使用薬剤料は、薬剤調製料の所定単位につき、使用薬剤の薬価が15円以下なら1点、15円を超える場合は10円またはその端数を増すごとに1点を加えます。薬価は国が定めるため、薬局が同じ薬を安く仕入れても薬剤料は変わりません。薬剤料から仕入れ値を引いた差額は残りますが、薬価改定のたびに縮む方向にあります。令和8年度の薬価改定は▲0.86%(令和8年4月施行)でした。

1-2. 妥結率は調剤基本料に響く

医療用医薬品の取引価格の妥結率が5割以下などの薬局は、調剤基本料を所定点数の100分の50で算定します(未妥結減算)。卸との価格交渉を先延ばしにすると、仕入れ値ではなく技術料の側で損をすることになります。

1-3. 令和8年度改定で増えた点数

項目点数備考
調剤基本料145点→47点区分の判定は調剤基本料の区分の見分け方を参照
調剤ベースアップ評価料処方箋の受付1回につき4点職員の賃金改善を図る体制の施設基準に適合し、届け出た薬局。令和9年6月以降は所定点数の100分の200
調剤物価対応料3月に1回1点処方箋を受け付けた場合。令和9年6月以降は所定点数の100分の200
電子的調剤情報連携体制整備加算月1回8点医療DX推進体制整備加算1〜3(10・8・6点)を一本化

改定の概要によると、令和8年度改定の診療報酬本体は2年度平均で+3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%)で、このうち賃上げ分として、令和8年度と令和9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップを実現するための措置が含まれています。各科への配分分の改定率は、医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%です。

2. 実態調査で見る保険薬局の平均的な収支

2-1. 調査の範囲

医療経済実態調査は、中医協が診療報酬の基礎資料とするために行う調査です。保険薬局は、1か月の調剤報酬明細書の取扱件数が300件以上の薬局から抽出され、第25回の有効回答は1,057施設(有効回答率55.4%)でした。同一敷地内薬局は別の区分で集計され、ここでの「保険薬局」には含まれません。前々年度は令和5年4月〜令和6年3月末、前年度は令和6年4月〜令和7年3月末に終了した事業年度です。

2-2. 1施設あたりの損益(法人)

新型コロナ関連の補助金を除いた数値です。構成比率は、収益(補助金を除く)と介護収益の合計に対する割合です。

項目前々年度前年度構成比率(前年度)
収益(補助金を除く)1億7,556万円1億7,971万円99.5%
うち保険調剤収益1億5,904万円1億6,258万円90.0%
うちその他の薬局事業収益1,626万円1,673万円9.3%
介護収益83万円90万円0.5%
費用1億6,733万円1億7,180万円95.1%
うち給与費3,142万円3,284万円18.2%
うち医薬品等費1億1,186万円1億1,420万円63.2%
うちその他の経費2,135万円2,184万円12.1%
損益差額906万円881万円4.9%
年間の処方箋枚数16,586枚16,996枚

(施設数1,018。千円単位の数値を万円に丸めています)

前年度の保険調剤収益を処方箋枚数で割ると、1枚あたり約9,570円です。この中には薬剤料が含まれるため、技術料だけの単価ではありません。

読み取れることは3つです。

  1. 費用の6割超は医薬品等費で、薬剤料と対になっています。
  2. 給与費は18.2%で、前年度は4.5%伸びました。収益の伸び(2.4%)を上回っています。
  3. 損益差額率は5.1%から4.9%に下がりました。処方箋枚数は増えても、費用の伸びが上回った形です。

2-3. 個人立の薬局

個人の保険薬局(39施設)は、前年度の収益7,348万円、費用6,531万円、損益差額821万円(11.2%)、処方箋枚数9,858枚でした。個人立の損益差額には開設者の報酬となる部分が含まれると調査自体が注記しているので、法人の損益差額率と横に並べて「個人の方が儲かる」と読むのは誤りです。

2-4. 同一グループの店舗数別(法人)

同一グループの店舗数施設数前年度の収益損益差額率(前々年度→前年度)年間の処方箋枚数(前年度)
1店舗591億719万円5.1%→5.2%13,379枚
2〜5店舗3171億4,620万円4.0%→3.2%15,772枚
6〜19店舗1511億4,157万円8.1%→7.6%16,302枚
20〜49店舗771億9,331万円9.8%→10.2%19,049枚
50〜99店舗531億8,185万円4.7%→5.1%17,734枚
100〜199店舗382億278万円5.1%→4.9%19,585枚

店舗数が大きい区分ほど施設数が少なく、1施設の数字で平均が動きやすい点に注意が必要です。2〜5店舗の区分は、前年度に損益差額率が0.8ポイント下がっています。

3. 自薬局の収支を見る手順

実態調査は「平均的な形」を示すだけです。自薬局の判断には、自分の数字を同じ形に並べることが必要です。

手順1 売上を「技術料・薬学管理料」と「薬剤料・材料料」に分ける

レセコンの月次集計から、調剤技術料・薬学管理料・薬剤料・特定保険医療材料料・第5節の点数を分けて出します。薬剤料を含めた売上だけを追うと、高額な薬の処方が増えた月に「売上が伸びた」と誤読します。

手順2 処方箋1枚あたりの技術料と薬学管理料を出す

技術料と薬学管理料の合計を、月の処方箋受付回数で割ります。調剤基本料の区分、加算の届出、かかりつけ薬剤師の算定、在宅の実績によって、この単価が変わります。

手順3 薬剤料と仕入れの差を見る

薬剤料の合計から、同じ月の医薬品の仕入れ(在庫の増減を調整したもの)を引きます。薬価改定の月の前後、後発医薬品への切り替え、期限切れの廃棄で大きく動きます。

手順4 給与費の比率を出す

給与費(法定福利費を含む)を、技術料と薬学管理料の合計で割ります。実態調査のように総収益で割ると、薬剤料の多寡で比率がぶれるためです。

手順5 改定の影響を試算する

令和8年6月以降の点数で、前年同月の処方箋に点数を当て直します。調剤ベースアップ評価料は受付1回4点、令和9年6月以降は8点相当になります。賃上げの原資として届け出ているかどうかで、収支の見え方が変わります。

4. 毎月の点検のチェックリスト

  • 売上を技術料・薬学管理料と薬剤料・材料料に分けて集計した
  • 処方箋受付回数と、1枚あたりの技術料・薬学管理料を前月・前年同月と比べた
  • 薬剤料と仕入れの差、在庫の増減を確認した
  • 給与費を技術料・薬学管理料の合計で割った比率を確認した
  • 妥結率の状況を卸と確認した
  • 調剤ベースアップ評価料・電子的調剤情報連携体制整備加算の届出と算定漏れを確認した
  • マイナ保険証利用率(加算の要件)を確認した
  • 期限切れ・破損による廃棄額を確認した

5. よくある読み違い

  • 薬剤料込みの売上で前年と比べる。高額薬の処方が増えれば売上は伸びますが、利益はほとんど増えません。
  • 個人立の損益差額を法人の利益と比べる。個人立の損益差額には開設者の報酬が含まれます。
  • 平均の損益差額率を「目標」にする。実態調査は抽出調査の平均で、立地・処方元・店舗数によって大きく違います。
  • 賃上げの点数を届け出ずに給与だけ上げる。調剤ベースアップ評価料は施設基準の届出が必要です。
  • 妥結率を放置する。妥結率が5割以下などの場合、調剤基本料が100分の50になります。

6. まとめ

  • 法人の保険薬局の平均は、保険調剤収益が約9割、医薬品等費が63.2%、給与費が18.2%、損益差額率が4.9%でした(第25回医療経済実態調査、前年度)。
  • 薬剤料は薬価で決まり、仕入れの費用と対になります。利益の源泉は技術料と薬学管理料です。
  • 令和8年度改定で、調剤基本料1が47点に上がり、調剤ベースアップ評価料(受付1回4点)と調剤物価対応料(3月に1回1点)が新設されました。
  • 自薬局の収支は、売上を分けたうえで、処方箋1枚あたりの技術料と給与費の比率を毎月追うのが基本です。

加算で技術料を積み上げる方法は、地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件と実績の数え方かかりつけ薬剤師の要件と算定電子処方箋に薬局が対応する手順で整理しています。


参考資料