結論から書きます。薬剤師の採用は、求人を出す前に「法令上の必要人数」と「加算・認定が求める在籍の条件」を確かめ、雇用形態と人数を決めるところから始めます。必要人数は体制省令で「1日平均取扱処方箋数÷40(端数は切り上げ)」以上と決まっており、かかりつけ薬剤師や地域支援・医薬品供給対応体制加算は、週31時間以上の勤務や一定期間の在籍を求めています。求人票には職業安定法が定める事項を明示し、虚偽や誤解を生む表示をしないことが前提です。

この記事は、e-Gov法令検索の「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」「職業安定法」「職業安定法施行規則」、厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」、中医協「第25回医療経済実態調査」にもとづいています。


1. まず必要人数を法令で確かめる

1-1. 1日平均取扱処方箋数÷40

体制省令第1条第1項第2号は、調剤に従事する薬剤師の員数を、その薬局の1日平均取扱処方箋数を40で割った数以上と定めています。

項目定め
1日平均取扱処方箋数前年の総取扱処方箋数 ÷ 前年に業務を行った日数
総取扱処方箋数の数え方眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2を掛け、その他の診療科の処方箋と合計する
端数40で割った数が1未満なら1、1未満の端数は1に切り上げ
前年の業務期間がない・3か月未満推定による

計算例:前年の処方箋が内科などで24,000枚、眼科で3,000枚、業務日数が300日の場合、総取扱処方箋数は24,000+3,000×2/3=26,000枚、1日平均は約86.7枚、40で割ると約2.17なので、必要な員数は3人です。

1-2. 開店時間を埋める

同じ条の第1号は、開店時間内は常時、調剤に従事する薬剤師が勤務していることを求めています。第6号は、調剤に従事する薬剤師の週当たり勤務時間数の総和が、開店時間の1週間の総和以上であることを求めています。人数だけでなく、シフトで開店時間を埋められるかを確かめます。

要指導医薬品や第1類医薬品を販売する薬局は、その営業時間内は常時、薬剤師が勤務している必要もあります(第3号)。

2. 加算・認定が求める「在籍」を確かめる

必要人数を満たしても、加算や認定の要件は別に在籍期間や勤務時間を求めています。採用の段階で、どの要件に誰を充てるかを決めておきます。

要件求めていること詳しい記事
かかりつけ薬剤師(薬剤師の要件)保険薬局の勤務経験3年以上、その薬局に週31時間以上勤務、継続6か月以上在籍、研修認定の取得、地域活動への参画かかりつけ薬剤師の要件と算定
かかりつけ薬剤師(薬局の要件)週31時間以上勤務する薬剤師の在籍期間が平均1年以上、または管理薬剤師が継続3年以上在籍同上
地域支援・医薬品供給対応体制加算管理薬剤師が薬局の勤務経験5年以上、週31時間以上勤務、その薬局に在籍1年以上地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件と実績の数え方
地域連携薬局の認定常勤の薬剤師の半数以上が、その薬局に継続して1年以上常勤で勤務地域連携薬局の認定要件

週31時間未満の勤務や短期の人員で人数を埋めると、法令上の人数は満たしても、これらの要件を満たせなくなります。採用計画では、常勤で長く勤める人を何人確保するかを先に決め、残りを短時間勤務で補う順番が合理的です。

3. 採用市場の事実を押さえる

3-1. 薬剤師の数と働く場所

厚生労働省の「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(令和6年12月31日現在)の数字です。

項目人数前回(令和4年)との比較
届出薬剤師数329,045人(女性62.0%)+1.7%
薬局の従事者197,437人(総数の60.0%)+3.5%
うち薬局の勤務者(管理者)49,537人+2.5%
うち薬局の勤務者(管理者以外)132,085人+5.1%
病院の従事者57,595人+1.8%
医薬品関係企業の従事者34,184人▲7.8%
店舗販売業の従事者5,090人▲17.2%

薬局の薬剤師の平均年齢は46.8歳で、年齢階級では30〜39歳が最も多くなっています。病院は42.5歳でした。薬局で働く薬剤師は増えていますが、女性が6割を超えることは、育児・介護と両立できる勤務形態を用意できるかが採用の条件になることを意味します。かかりつけ薬剤師の要件も、育児・介護で労働時間を短縮している場合は週24時間以上かつ週4日以上で認めています。

3-2. 賃金の平均

第25回医療経済実態調査(令和7年11月公表)の、法人の保険薬局の職種別の平均給料年額と賞与(前年度)です。

職種平均給料年額賞与合計
管理薬剤師644.9万円81.3万円726.2万円
薬剤師425.1万円55.2万円480.3万円
事務職員231.7万円40.4万円272.0万円

前々年度からの伸びは、管理薬剤師0.2%、薬剤師0.3%でした。調査の平均値であり、地域や勤務形態の違いは反映されていません。自薬局の条件を決めるときは、近隣の求人票の条件と合わせて確かめます。

令和8年度改定では、令和8年度と令和9年度にそれぞれ3.2%(事務職員などは5.7%)のベースアップを実現するための措置が含まれ、調剤ベースアップ評価料(処方箋の受付1回につき4点、施設基準の届出が必要)が新設されました。賃上げの原資と求人の条件を合わせて考えることができます。収支の見方は保険薬局の収支の見方で整理しています。

3-3. 採用にかかる費用の平均

同じ調査の法人の保険薬局1施設あたりの費用では、人材委託費は前々年度57.8万円から前年度80.2万円(+38.8%)、紹介手数料は6.9万円から11.4万円(+65.2%)に増えました。平均値のため1施設の実態とは違いますが、外部の人材サービスへの支出が増えている傾向は読み取れます。

4. 求人票に書くこと

4-1. 明示が必要な事項

職業安定法第5条の3は、労働者の募集を行う者に、業務の内容と賃金・労働時間その他の労働条件の明示を求めています。明示する事項は施行規則第4条の2第3項に定められています。

  • 業務の内容(変更の範囲を含む
  • 労働契約の期間
  • 試用期間
  • 有期契約を更新する場合の基準(通算契約期間や更新回数の上限がある場合はその上限を含む)
  • 就業の場所(変更の範囲を含む
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日
  • 賃金の額
  • 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用
  • 雇用しようとする者の氏名または名称
  • 派遣労働者として雇用する場合はその旨
  • 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置

明示は書面の交付か、相手が希望した場合の電子メール等で行います。試用期間中と試用期間後で条件が違う場合は、それぞれを示さなければなりません(同条第6項)。複数店舗を持つ薬局は、「就業の場所の変更の範囲」に応援勤務や異動の範囲を書いておくことが、入職後の行き違いを防ぎます。

4-2. 表示の正確さ

職業安定法第5条の4は、広告等で募集の情報を提供するときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定め、募集を行う者に情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています。採用が決まった求人を出したままにしたり、実際より高い賃金の例だけを載せたりすることは避けます。

4-3. 薬剤師に伝わる書き方

法定の事項に加えて、薬剤師が比べる材料になる情報を書きます。

  • 1日の処方箋の枚数と主な処方元の診療科
  • 在宅訪問の有無と件数、かかりつけ薬剤師の算定の方針
  • 電子薬歴・電子処方箋・自動分包機などの設備
  • 研修認定の取得支援や研修の受講の扱い
  • 育児・介護の短時間勤務の実績と、週の勤務時間の選び方

5. 採用経路ごとの確かめ方

経路確かめること
ハローワーク求人の申込みの際の労働条件の明示(職業安定法第5条の3第2項)
求人広告・自社サイト表示が正確かつ最新か(第5条の4)
有料職業紹介公表されている就職者数、6か月以内の離職者数、平均手数料率、返戻金制度
知人・元職員の紹介労働条件の明示を省かない

有料職業紹介事業者は、職業安定法第32条の16第3項と施行規則第24条の8により、紹介で就職した人の数、無期雇用で就職した人のうち6か月以内に離職した人の数、職種ごとの常用就職1件あたりの平均手数料率、返戻金制度をインターネットで公表しなければなりません。契約前に複数社の公表内容を並べて比べることで、手数料と定着の両面から選べます。

6. 採用を進める手順

  1. 必要人数を計算する。前年の処方箋を診療科別に集計し、÷40で員数を出します。
  2. 開店時間のシフトを組む。週当たり勤務時間の総和が開店時間以上になるかを確かめます。
  3. 加算・認定の要件に誰を充てるかを決める。管理薬剤師の在籍年数、かかりつけ薬剤師の候補、常勤の半数の継続勤務を一覧にします。
  4. 雇用形態と条件を決める。常勤と短時間勤務の人数、賃金、就業場所の変更の範囲を決めます。
  5. 求人票を作る。第4章の明示事項を漏れなく書き、薬剤師が比べる材料を足します。
  6. 採用経路を選ぶ。紹介会社は公表内容で比べます。
  7. 入職時に書面で明示し、記録を残す。明示した内容の記録は、募集が終わる日(その後に契約する場合は契約する日)まで保存します(施行規則第4条の2第7項)。

7. よくある落とし穴

  • 人数を「今いる人」で数える。必要人数は前年の処方箋数で決まります。処方箋が増えた年の翌年は員数が足りなくなることがあります。
  • 短時間勤務だけで人数を埋める。かかりつけ薬剤師や地域支援の加算の在籍要件を満たせなくなります。
  • 就業場所の変更の範囲を書かない。応援勤務や異動のたびに行き違いが起きます。
  • 採用が決まった求人を出し続ける。職業安定法は募集情報を正確かつ最新に保つことを求めています。
  • 紹介会社を手数料だけで選ぶ。6か月以内の離職者数や返戻金制度も公表されています。

8. まとめ

  • 必要人数は「1日平均取扱処方箋数÷40(端数切り上げ)」以上で、眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2で数えます。
  • かかりつけ薬剤師・地域支援の加算・地域連携薬局は、週31時間以上の勤務や在籍期間を求めています。採用計画は常勤の確保から考えます。
  • 求人票には、業務と就業場所の変更の範囲を含む職業安定法の明示事項を書き、正確かつ最新に保ちます。
  • 有料職業紹介は、公表されている就職者数・6か月以内の離職者数・平均手数料率・返戻金制度で比べます。

参考資料