結論から書きます。令和8年度改定で「かかりつけ薬剤師指導料」は廃止され、かかりつけ薬剤師の服薬指導は服薬管理指導料の1のイ・2のイで算定する形に変わりました。1のイ・2のイの点数そのものは、かかりつけ以外の薬剤師が行う1のロ・2のロと同じです。報酬上の差は、新設のかかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)・訪問加算(230点)と、地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績としてかかりつけの算定回数が数えられる点に移りました。「同意を取って点数を上げる」仕組みから、「継続して関わった実績で評価される」仕組みへの転換です。
この記事は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)と「保険調剤の理解のために(令和8年度)」にもとづいています。
1. 点数の変化
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| かかりつけ薬剤師指導料 | 76点 | 廃止 |
| かかりつけ薬剤師包括管理料 | あり | 廃止 |
| 服薬管理指導料1(3月以内の再来局で手帳を提示) | 45点 | 1のイ(かかりつけ薬剤師)45点/1のロ(それ以外)45点 |
| 服薬管理指導料2(1以外の患者) | 59点 | 2のイ(かかりつけ薬剤師)59点/2のロ(それ以外)59点 |
| かかりつけ薬剤師フォローアップ加算 | ― | 50点(3月に1回)新設 |
| かかりつけ薬剤師訪問加算 | ― | 230点(6月に1回)新設 |
| 服用薬剤調整支援料2 | 110点/90点 | 1,000点(かかりつけ薬剤師が行うことが要件。令和9年6月1日から適用) |
改定の概要は、この見直しを「かかりつけ薬剤師の包括的評価から実績重視の評価への転換」と説明しています。
1のイ・ロ、2のイ・ロの分け方
| 区分 | 対象の患者 |
|---|---|
| 1のイ | 3月以内に再来局し手帳を提示した患者で、かかりつけ薬剤師が継続的・一元的に服薬管理しているもの |
| 1のロ | 3月以内に再来局し手帳を提示した患者で、かかりつけ薬剤師がいる薬局でそれ以外の薬剤師が指導したもの、またはかかりつけ薬剤師を持たないもの |
| 2のイ | 3月を超えて再来局した患者、または3月以内の再来局で手帳を提示しない患者で、かかりつけ薬剤師が継続的・一元的に服薬管理しているもの |
| 2のロ | 初めて処方箋を持参した患者など、上のいずれにも当たらないもの |
2. かかりつけ薬剤師(個人)の要件
かかりつけ薬剤師として指導を行う保険薬剤師は、次のすべてを満たす必要があります(施設基準通知)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 勤務経験 | 届出時点で、保険薬剤師として保険薬局の勤務経験が3年以上。保険医療機関の薬剤師として1年以上の勤務経験がある場合は、1年を上限に含められる |
| 勤務時間 | その薬局に週31時間以上勤務。育児休業・介護休業等の措置で所定労働時間が短縮された場合は、週24時間以上かつ週4日以上 |
| 在籍期間 | 届出時点で、その薬局に継続して6か月以上在籍。産前産後休業・育児休業・介護休業から同じ薬局に復職する場合は、休業前の在籍期間を合算できる |
| 研修認定 | 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得 |
| 地域活動 | 医療に係る地域活動の取組に参画 |
3. 薬局の施設基準
届出時点で、次の(1)(2)をどちらも満たす必要があります。
- (1) 次のいずれか
- その薬局に週31時間以上勤務する保険薬剤師(派遣労働者を含み、産前産後休業・育児休業・介護休業中の人を除く)について、継続して在籍し週31時間以上勤務している期間が平均して1年以上
- 管理薬剤師がその薬局に継続して3年以上在籍
- (2) プライバシーへの配慮
- 患者との会話が他の患者に聞こえないよう、パーテーション等で区切られた独立したカウンターを持つなど
(1)は、薬剤師の定着そのものが施設基準になったということです。異動や退職が多い薬局では、個々の薬剤師が要件を満たしていても届出ができない場合があります。
4. 同意の取り方と記録
「保険調剤の理解のために」に示された留意事項を、運用の順に並べます。
- 対象の患者を選ぶ。同意は、その薬局に複数回来局している患者から取ります。
- 本人が説明する。算定しようとする薬剤師本人が、かかりつけ薬剤師の業務内容や、かかりつけ薬剤師を持つことの意義・役割を説明し、患者または家族等から同意を得ます。
- 手帳に記入する。患者の手帳の所定の事項と薬剤師の氏名の近くに「かかりつけ」と記入します。別の薬局のかかりつけ薬剤師の氏名が書かれた手帳には、原則として上書きしません。
- コピーを保管する。記入したページのコピー等を薬局で保管し、薬剤服用歴等にその旨を記載します。
- 算定を始める。同意を得たときの処方箋受付から算定できます。
1人の患者について、1か所の薬局の1人の薬剤師だけが1のイ・2のイを算定できます。同じ月の中では、同じ薬局の同じ薬剤師で算定します。患者の選択でかかりつけ薬剤師を変える場合は、薬剤服用歴にもその旨を書きます。
5. かかりつけ薬剤師が行う業務
かかりつけ薬剤師は、担当の患者に対して次の業務を行います。
- 患者の理解に応じた服薬指導
- 患者の意向を確かめたうえで、服薬指導の内容を手帳等に記載
- 受診しているすべての医療機関、服用しているすべての処方薬・要指導医薬品・一般用医薬品・健康食品を把握し、薬剤服用歴等に記載
- 他の医療機関や薬局にかかるときは、かかりつけ薬剤師がいることを伝えるよう患者に説明
- 自分の勤務日などを患者に伝える
- 休日・夜間を含む相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝える
- 他の薬局で調剤を受けた場合は、その情報を入手して記載
- 服用中の薬を持参してもらう取組(ブラウンバッグ運動)の意義を説明
- 必要に応じ、患者の同意を得て検査結果を参考にする
服薬指導はかかりつけ薬剤師が行うのが原則です。やむを得ずほかの薬剤師が対応した場合は、1のロまたは2のロで算定し、得た情報をかかりつけ薬剤師と共有します。時間外の相談にほかの薬剤師が応じた場合も、内容をかかりつけ薬剤師と共有します。
6. 新設の2つの加算
6-1. かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点・3月に1回)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の患者 | 1のイまたは2のイを算定していて、直近6月以内に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1・2、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算のいずれかを算定している患者 |
| 業務 | 前回の調剤後から再度処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話等で服薬状況・残薬状況を確認し、必要な指導をする |
| 算定の時点 | 再度処方箋を受け付けたとき |
| 事前の説明 | 聞き取りや指導の内容と、患者の自己負担額を説明し了解を得る |
| 記録 | フォローアップした旨・日時・内容を薬剤服用歴等に記載 |
一律の内容のメールの一斉送信や、アプリで定型の設問に答えてもらうだけで個別の確認・助言を伴わないものは、算定の対象になりません。調剤した当日と処方箋を持参する当日は、フォローアップの期間に含みません。在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費を算定している患者は、同じ月には算定できません。
6-2. かかりつけ薬剤師訪問加算(230点・6月に1回)
患者や家族等の求めに応じて患家を訪問し、服用薬の管理方法の指導と残薬の整理等を行い、その結果を医療機関に情報提供した場合に、次に処方箋を受け付けたときに算定します。事前に、指導の内容と自己負担額(交通費を含む)を説明して了解を得ます。交通費は実費です。
外来服薬支援料1、施設連携加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料、居宅療養管理指導費を算定している患者には算定できません。
7. 経営への影響
1のイと1のロの点数は同じなので、かかりつけの同意を取っただけでは1回あたりの報酬は増えません。経営に効くのは次の3点です。
- 地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績。服薬管理指導料1のイ・2のイの算定回数は、この加算の実績項目の1つで、加算2・4では必須です(詳しくは地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件と実績の数え方)。
- 新設の加算。残薬や重複投薬の問題がある患者を継続して見ることで、フォローアップ加算・訪問加算が算定できます。
- かかりつけ機能の減算を避ける。調剤基本料には、保険薬剤師のかかりつけ機能に係る基本的業務を1年間実施していない薬局が所定点数の100分の50で算定する減算があります。
8. 始めるための手順とチェックリスト
- 常勤の薬剤師ごとに、保険薬局の勤務経験・週の勤務時間・在籍期間・研修認定・地域活動を一覧にする。
- 薬局の施設基準(平均在籍1年以上、または管理薬剤師の在籍3年以上)を確かめる。
- プライバシーに配慮したカウンターを用意する。
- 同意の説明の文面と、手帳に記入する手順を決める。
- 管轄の地方厚生(支)局に届け出る。
- 同意した患者の一覧を作り、フォローアップ加算の対象になる患者(直近6月に残薬調整などを算定)に印を付ける。
- 届け出る薬剤師全員が5つの要件をすべて満たしている
- 薬局の施設基準(在籍期間)を満たしている
- パーテーション等で区切った独立したカウンターがある
- 同意は複数回来局している患者から、薬剤師本人の説明で取っている
- 手帳に「かかりつけ」と記入し、そのページのコピーを保管している
- 他の薬剤師が対応した日は1のロ・2のロで算定している
- 時間外の連絡先を患者に伝えている
- フォローアップの記録(日時・内容)を薬剤服用歴に残している
9. まとめ
- かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、服薬管理指導料1のイ・2のイに一本化されました。点数は1のロ・2のロと同じです。
- 薬剤師の要件は、保険薬局の経験3年以上・週31時間以上・在籍6か月以上・研修認定・地域活動の5つです。
- 薬局の要件は、薬剤師の平均在籍1年以上か管理薬剤師の在籍3年以上と、プライバシーへの配慮です。
- 新設のフォローアップ加算(50点)と訪問加算(230点)、地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績が、かかりつけに取り組む報酬上の理由になります。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf
- 厚生労働省「保険調剤の理解のために(令和8年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001713154.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別紙1-3 調剤報酬点数表」 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655180.pdf