結論から書きます。薬局が在宅訪問を始めるときにすることは、大きく「届出」「体制づくり」「患者ごとの手続き」の3つです。医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料は、別紙様式3で地方厚生(支)局に届け出てから算定します。介護保険の居宅療養管理指導は、保険薬局の指定を受けた時点で指定があったものとみなされるので新たな指定申請は要りませんが、運営規程と重要事項の説明は必要です。そのうえで、医師の指示、薬学的管理指導計画、訪問、医師への文書での報告、記録という流れを患者ごとに回します。

この記事は、厚生労働省「保険調剤の理解のために(令和8年度)」、告示の調剤報酬点数表、「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」、e-Gov法令検索の介護保険法と「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)にもとづいています。


1. 全体の流れ

段階すること根拠
1 届出別紙様式3で在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生(支)局に届け出る留意事項通知(保険調剤の理解のために)
2 介護保険の準備みなし指定の確認、運営規程の作成、重要事項説明書の用意介護保険法第71条、運営基準第90条・第91条
3 体制づくり時間外の連絡体制、在宅協力薬局との連携、記録の様式留意事項通知
4 患者ごとの手続き医師の指示、同意、重要事項の説明、計画の策定留意事項通知、運営基準第8条
5 訪問と報告訪問して薬学的管理指導、医師に文書で報告、ケアマネジャーに情報提供留意事項通知、運営基準第89条
6 記録と見直し薬剤服用歴に記載、計画を月1回以上見直す留意事項通知

2. 医療保険の届出

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、あらかじめ名称、所在地、開設者の氏名と、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生(支)局長に届け出た保険薬局が算定できます。届出の様式は別紙様式3です。

次の薬局は算定できないので、先に確かめてください。

  • 特別調剤基本料Bの薬局(調剤基本料の施設基準の届出をしていない薬局など)
  • 医療用麻薬持続注射療法加算、在宅中心静脈栄養法加算は、別に施設基準の届出が必要です

調剤基本料の届出と区分については調剤基本料の区分の見分け方にまとめています。

3. 介護保険の準備

3-1. みなし指定

介護保険法第71条により、健康保険法の保険薬局の指定があったときは、その時点で、その薬局の開設者について居宅療養管理指導に限って指定居宅サービス事業者の指定があったものとみなされます。開設者が別段の申出をした場合などは除かれます。

つまり、保険薬局であれば通常は新たに指定の申請をしなくても、居宅療養管理指導を提供できる立場にあります。

3-2. 運営規程

運営基準第90条は、居宅療養管理指導の事業所ごとに次の事項を定めた運営規程を置くよう求めています。

  1. 事業の目的と運営の方針
  2. 従業者の職種、員数、職務の内容
  3. 営業日と営業時間
  4. 居宅療養管理指導の種類と利用料その他の費用の額
  5. 通常の事業の実施地域
  6. 虐待の防止のための措置に関する事項
  7. その他運営に関する重要事項

3-3. 重要事項の説明と同意

運営基準第91条で準用する第8条により、提供を始める前に、運営規程の概要などの重要事項を記した文書を交付して説明し、利用申込者の同意を得ます。利用者や家族の申出があれば、承諾を得て電磁的方法で提供することもできます。

交通費を受け取る場合は、あらかじめ内容と費用を説明し、同意を得ます(運営基準第87条)。

4. 体制づくり

4-1. 時間外の連絡体制

令和8年度改定の概要では、夜間・休日の連絡先を文書で交付することが在宅患者訪問薬剤管理指導料の要件に新たに加わりました。留意事項通知では、原則として初回の訪問時(変更があればその都度)に、次のことを事前に説明し、文書(これらを記載した薬袋を含む)で交付するよう求めています。

  • 薬局の薬剤師と連絡がとれる電話番号
  • 緊急時の注意事項
  • 在宅協力薬局と連携している場合は、その所在地・名称・電話番号

電話に出られなかったときは、速やかに折り返す体制も必要です。

4-2. 在宅協力薬局

主に訪問している薬局(在宅基幹薬局)が、連携する他の薬局(在宅協力薬局)と計画の内容を共有し、緊急時などに代わりに訪問することを患者の同意を得ておけば、在宅協力薬局が訪問した場合も算定できます。この場合の医師への報告は在宅基幹薬局が行い、指導料も在宅基幹薬局が算定します。費用は両薬局の合議です。

1人の薬剤師で始める薬局は、時間外や不在時に備えて、在宅協力薬局を先に決めておくと体制が安定します。

4-3. 訪問できる範囲

薬局の所在地と患家との距離が16kmを超える場合は、特殊の事情がある場合を除き算定できません。訪問に要した交通費は患家の負担です。運営規程の「通常の事業の実施地域」も、この範囲を踏まえて決めます。

5. 患者ごとの手続き

  1. 対象を確かめる。在宅で療養していて通院が困難な患者が対象です。留意事項通知は、独歩で家族や介助者の助けを借りずに来局できる人などは算定できないとしています。
  2. 医師の指示を受ける。訪問は医師の指示にもとづいて行います。
  3. 介護認定を確かめる。要介護・要支援の認定を受けている人は、原則として介護保険の居宅療養管理指導が優先されます(健康保険法第55条第3項の給付調整)。
  4. 同意と説明。患者の同意を得て、介護保険の場合は重要事項を説明します。時間外の連絡先を文書で渡します。
  5. 薬学的管理指導計画を作る。処方医から提供された診療状況の文書などにもとづき、必要に応じて処方医と相談し、訪問看護の看護師などとも情報を共有しながら策定します。薬剤の管理方法、薬剤の特性(薬物動態・副作用・相互作用など)を確かめ、実施すべき指導の内容、訪問回数、訪問間隔を書きます。原則として訪問前に策定します。
  6. 訪問する。薬歴管理、服薬指導、服薬支援、服用状況・保管状況・残薬の確認などを行います。訪問は、その薬局が調剤した薬剤の服用期間内に行います。
  7. 医師に文書で報告する。訪問の結果を、指示をした医師に文書で情報提供します。必要に応じて、処方医以外の医療関係職種にも情報提供します。
  8. ケアマネジャーへの情報提供(介護保険)。運営基準第89条第2項では、必要な場合やケアマネジャーから求めがあった場合、居宅サービス計画の作成などに必要な情報提供・助言を行い、原則としてサービス担当者会議への参加で、それが難しいときは文書の交付で行うとしています。

6. 記録(薬剤服用歴に書くこと)

在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するには、薬学管理料の通則の記載事項に加えて、少なくとも次の事項を薬剤服用歴等に記載します。

  • 訪問の実施日と、訪問した薬剤師の氏名
  • 処方医から提供された情報の要点
  • 実施した薬学的管理指導の内容(保管状況、服薬状況、残薬、併用薬、併診、体調の変化、重複服用、相互作用の確認、実施した服薬支援など)
  • 処方医に提供した訪問結果の要点
  • 処方医以外の医療関係職種と情報を共有した場合は、受け取った情報と提供した情報の要点
  • 在宅協力薬局が訪問した場合は、その記録の共有
  • 計画書を薬剤服用歴等に添付するなどして保存

計画は少なくとも月に1回見直し、処方薬剤の変更や他職種からの情報提供があったときにも見直します。調剤をしていない月に訪問した場合は、調剤年月日と投薬日数を調剤報酬明細書の摘要欄に書きます。

7. 算定の上限と点数

項目内容
点数(医療保険)単一建物診療患者が1人:650点、2〜9人:320点、それ以外:290点
回数服薬管理指導料4のロと合わせて月4回。末期の悪性腫瘍、注射による麻薬の投与、中心静脈栄養法の患者は週2回かつ月8回
間隔月2回以上算定する場合は週1回を限度(令和8年度改定で「中6日以上」から変更)
薬剤師1人あたり服薬管理指導料4のロと合わせて週40回まで
主な加算麻薬管理指導加算100点、医療用麻薬持続注射療法加算250点、乳幼児加算100点、小児特定加算450点、在宅中心静脈栄養法加算150点

同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合や、その建物で算定する人数が建物の戸数の10%以下の場合などは、それぞれ「1人の場合」で算定する特例があります。

在宅の実績は、地域支援・医薬品供給対応体制加算や地域連携薬局の認定の要件にもなります(地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件と実績の数え方地域連携薬局の認定要件)。

8. 落とし穴

  • 届出前に算定する。別紙様式3の届出が先です。
  • 来局できる人に算定する。継続的な訪問の必要がない人や通院できる人には算定できません。
  • 介護認定の確認漏れ。要介護・要支援の人は原則として介護保険が優先です。医療保険で請求すると返戻や指導の対象になります。
  • 計画を訪問後に作る。計画は原則として訪問前に策定します。
  • 時間外の連絡先を口頭だけで伝える。文書での交付が要件です。

9. まとめ

  • 医療保険は別紙様式3の届出、介護保険はみなし指定の確認と運営規程・重要事項の説明から始めます。
  • 時間外の連絡先の文書交付と在宅協力薬局との連携で、体制を固めます。
  • 医師の指示、訪問前の計画、訪問、医師への文書報告、記録、月1回以上の計画の見直しを患者ごとに回します。
  • 令和8年度改定で、月2回以上の算定の間隔は「週1回を限度」に変わりました。

参考資料