結論から書きます。調剤基本料の区分は、「月の処方箋受付回数」「処方箋集中率」「同一グループ全体の受付回数」「立地(都市部・敷地内・医療モール)」の4つで決まります。令和8年度改定では、基本料1が45点から47点に上がる一方、都市部の門前薬局を対象にした調剤基本料2の新基準と、新規開設の薬局に対する門前薬局等立地依存減算(▲15点)ができました。既存の薬局には経過措置がありますが、移転・新規出店を考えている薬局は、立地を決める前に区分を確かめる必要があります。
この記事では、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)と、告示の調剤報酬点数表にもとづいて、区分の見分け方と判定の時期を整理します。
1. 調剤基本料の区分と点数の一覧
調剤基本料は、処方箋の受付1回につき算定する点数です。令和8年度改定後の区分と点数は次のとおりです。
| 区分 | 主な基準(受付回数はすべて月あたり) | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 基本料2・3、特別調剤基本料のいずれにも当たらない | 45点 | 47点 |
| 調剤基本料2 | 下の表の①〜④のいずれか | 29点 | 30点 |
| 調剤基本料3イ | 同一グループで受付3万5千回超〜40万回、かつ集中率85%超 | 24点 | 25点 |
| 調剤基本料3ロ | 同一グループで受付40万回超、かつ集中率85%超 | 19点 | 20点 |
| 調剤基本料3ハ | 同一グループで受付40万回超、かつ集中率85%以下 | 35点 | 37点 |
| 特別調剤基本料A | いわゆる同一敷地内薬局 | 5点 | 5点 |
| 特別調剤基本料B | 調剤基本料の届出がない薬局 | 3点 | 3点 |
改定の概要では、基本料1と基本料3ハの引上げの理由を「面分業推進の観点」と説明しています。特定の医療機関に依存しない薬局ほど点数が高くなる方向の改定です。
なお、調剤基本料3のロ・ハにあった「同一グループの保険薬局の数が300以上」という基準は、令和8年度改定で削除されました。大手チェーンの区分は、店舗数ではなくグループ全体の受付回数と集中率で決まります。
2. 調剤基本料2に当たる4つの条件
調剤基本料2は、次のいずれかに当たる薬局です。
| 番号 | 条件 |
|---|---|
| ① | 都市部で、受付回数が600回超1,800回以下、かつ集中率85%超(令和8年度改定で新設) |
| ② | 受付回数が1,800回超、かつ集中率85%超 |
| ③ | 受付回数が4,000回超、かつ上位3つの医療機関の集中率の合計が70%超 |
| ④ | 特定の医療機関からの受付回数が4,000回超 |
①の「都市部」は、特別区(東京23区)と政令指定都市の地域です。ただし、半径500m以内に他の保険薬局が無い地点は除かれます。
①には経過措置があります。令和8年5月31日までに開設し、改定後も継続して受付回数が1,800回以下の既存の薬局には、当面の間、適用しません。つまり①が効いてくるのは、主に令和8年6月1日以降に開設する薬局です。
3. 処方箋集中率の計算方法(令和8年度改定で変わった点)
処方箋集中率は、特定の保険医療機関から受け付けた処方箋の回数を、同じ期間に受け付けたすべての処方箋の回数で割った値です。同じ医療機関から歯科と歯科以外の処方箋を受け付けた場合は、合計して数えます。
令和8年度改定では、計算の方法が2点変わりました。
- 医療モールは1つの医療機関とみなす。1つの建物内または1つの敷地内に複数の保険医療機関がある場合(医療モール・医療ビレッジ)は、それらの受付回数をすべて合算して、特定の医療機関の回数とみなします。診療科の違う複数のクリニックが入ったビルの1階にある薬局は、改定前より集中率が高く出ることがあります。
- 施設に入居する患者の処方箋は計算から除く。特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)・介護老人保健施設・介護医療院・サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム・認知症高齢者グループホームに入居する患者の処方箋は、分子からも分母からも除きます。ただし、単一建物で患者が1人の場合の処方箋は除きません。
集中率を自分で計算するときは、レセコンの医療機関別の集計に、この2点を反映させてから割り算をしてください。
4. 門前薬局等立地依存減算(▲15点)
令和8年度改定で、新規開設の薬局を対象にした減算ができました。調剤基本料から15点を減算します(特別調剤基本料Aを算定する薬局を除く)。
4-1. 対象になる薬局
次の(1)または(2)に当たる薬局です。
(1) 次のイ・ロ・ハのすべてに当たる
- イ 都市部に所在し、水平距離500m以内に他の保険薬局がある
- ロ 特定の保険医療機関の処方箋の割合が85%を超える
- ハ 次のいずれかに当たる
- 200床以上の保険医療機関の敷地の境界線から水平距離100m以内の区域に所在し、その区域内と医療機関の敷地内に他の保険薬局が2以上ある
- 自局の周囲50mの区域内に、他の保険薬局が2以上ある
- 自局の周囲50mの区域内にある他の保険薬局が、上の条件に当たる
(2) 次のイ・ロの両方に当たる
- イ 特定の保険医療機関の処方箋の割合が85%を超える
- ロ 保険医療機関と同一の敷地内または建物内に所在する(医療モール内を含む)
4-2. 経過措置
令和8年5月31日に現に保険薬局の指定を受けている薬局は、当面の間、この減算の施設基準に該当しないものとされます。減算は、令和8年6月1日以降に新規開設する薬局に向けたものです。
ただし、移転や開設者の変更で新たに保険薬局の指定を受け直す場合に既存の扱いが続くかどうかは、改定の概要からは読み取れません。移転を計画しているときは、管轄の地方厚生(支)局に事前に確かめてください。
5. 特別調剤基本料A・Bの見直し
5-1. 特別調剤基本料A(5点)
医療機関と不動産取引等その他の特別な関係がある薬局で、その医療機関の処方箋の割合が5割を超えるものが対象です。令和8年度改定で次の点が変わりました。
- 同一建物内に診療所がある場合の除外規定を削除。これまでは、薬局と同じ建物内に診療所がある場合は特別調剤基本料Aの対象外でしたが、この除外がなくなりました(令和8年3月4日時点で建物内に診療所が所在していた場合の経過措置あり)。
- 同一敷地内にオンライン診療受診施設を設置する薬局も対象に。ただし、無医地区・準無医地区に所在する薬局は除きます。
- へき地の例外を新設。へき地の医療のために必要な診療所として都道府県知事に認められた、地方公共団体の土地にある診療所などと同一の土地・建物にあり、水平距離4km以内に他の保険薬局が無い薬局は、調剤基本料1を算定します。
特別調剤基本料Aの薬局は、地域支援・医薬品供給対応体制加算や在宅薬学総合体制加算などを、所定点数の100分の10でしか算定できません。
5-2. 特別調剤基本料B(3点)
調剤基本料の施設基準の届出をしていない薬局などが算定します。特別調剤基本料Bの薬局は、在宅患者訪問薬剤管理指導料など多くの点数を算定できないため、開局時の届出漏れには注意が必要です。
6. 調剤基本料にかかる主な減算と特例
区分とは別に、次の減算・特例があります(点数表の調剤基本料の注)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 複数の医療機関の処方箋の同時受付(注3) | 1枚は所定点数の100分の100、それ以外は1枚ごとに100分の80 |
| 未妥結減算など(注4) | 別に定める薬局は所定点数の100分の50 |
| 後発医薬品減算(注8) | 後発医薬品の調剤に関して別に定める薬局は5点を減算。ただし受付回数が月600回以下の薬局は除く |
| 門前薬局等立地依存減算 | 上の第4章のとおり15点を減算 |
未妥結減算は、4月1日から9月末日までの妥結率の実績で判断し、翌年6月1日から翌々年5月末日までが対象になります。妥結率と医療用医薬品の取引の状況の報告は11月末までに行います。報告をすれば、対象期間でも減算の対象外になります。
7. 判定の期間と届出の時期
区分は1回決めたら終わりではなく、毎年判断し直します。
| 薬局の状態 | 判断の期間 | 適用の期間 |
|---|---|---|
| 継続している薬局 | 前年5月1日から当年4月末日までの1年間の実績(毎年5月に判断) | 当年6月1日から翌年5月末日まで |
| 新規に指定を受けた薬局 | 指定当初は要件なし。その後3か月の実績 | 翌年5月末日まで |
区分が変わるときは届出が必要です(様式84など)。区分に変更がなければ届出は要りません。門前薬局等立地依存減算は、調剤基本料と一緒に届け出ます。
届出は、薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局の都道府県事務所に行います。「保険医療機関等電子申請・届出等システム」を使えばオンラインで提出でき、改定の概要では令和8年1月26日時点で324の施設基準の届出がオンライン申請の対象とされています。利用にはオンライン請求ネットワークに接続した端末と専用のID・パスワードが必要です。
なお、令和8年度改定の点数を6月1日から算定するための届出は、令和8年5月7日から6月1日(必着)までが期限でした。次の区分の見直しは令和9年5月に判断し、6月1日から適用されます。
8. 自局の区分を確かめる手順
- 受付回数を月別に出す。前年5月から当年4月までの12か月の処方箋受付回数を、レセコンから月別に出します。
- 医療機関別の回数を出す。同じ期間の医療機関別の受付回数を出し、同じ建物・敷地の医療機関を合算します。施設入居者の処方箋を除きます。
- 集中率を計算する。最も多い医療機関(または医療モール)の割合と、上位3つの合計を出します。
- グループ全体の受付回数を確かめる。同一グループに属する薬局があれば、グループ全体の月の受付回数を本部に確かめます。
- 立地を確かめる。都市部(特別区・政令指定都市)か、半径500m以内に他の保険薬局があるか、医療機関と特別な関係や同一敷地・同一建物の関係が無いかを確かめます。
- 区分を当てはめる。上の第1章・第2章の表に当てはめ、区分が変わる場合は届出の準備をします。
確かめるためのチェックリスト
- 前年5月〜当年4月の月別の受付回数を出した
- 医療モール・医療ビレッジの医療機関を1つにまとめて集中率を計算した
- 施設入居者の処方箋を集中率の計算から除いた(単一建物で1人の場合を除く)
- 上位3つの医療機関の集中率の合計を出した
- 同一グループ全体の受付回数を確かめた
- 都市部に当たるか、半径500m以内に他の保険薬局があるかを確かめた
- 令和8年5月31日時点で保険薬局の指定を受けていたか(経過措置の対象か)を確かめた
- 妥結率の報告を11月末までに済ませる段取りをした
- 区分が変わる場合の届出の期限を、管轄の厚生(支)局で確かめた
9. 落とし穴
- 医療モールの合算を忘れる。改定前の計算方法のまま集中率を出すと、実際より低く見積もってしまいます。
- 経過措置を新規出店にも当てはめる。都市部の基本料2と立地依存減算の経過措置は、令和8年5月31日時点で開設・指定済みの薬局が対象です。新規の出店計画には当てはまりません。
- 受付回数が1,800回を超えて経過措置から外れる。都市部の基本料2の経過措置は「改定後も継続して1,800回以下」が条件です。処方箋が増えて1,800回を超えた場合の扱いは、改定の概要の注記の文言どおり確かめてください。
- 加算の区分と連動していることを忘れる。地域支援・医薬品供給対応体制加算は、調剤基本料1の薬局とそれ以外の薬局で区分と実績の基準が違います。基本料の区分が変わると、加算の区分も見直しになります。
10. まとめ
- 調剤基本料の区分は、受付回数・集中率・グループ全体の受付回数・立地の4つで決まります。
- 令和8年度改定で、基本料1は47点、基本料3ハは37点に上がりました。
- 都市部の門前薬局を対象にした基本料2の新基準と、新規開設の薬局を対象にした門前薬局等立地依存減算(▲15点)ができました。どちらも既存の薬局には当面の経過措置があります。
- 集中率は、医療モールの医療機関を1つにまとめ、施設入居者の処方箋を除いて計算します。
- 区分は、前年5月から当年4月までの実績で毎年5月に判断し、6月1日から1年間適用します。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001717704.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別紙1-3 調剤報酬点数表」 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655180.pdf
- 厚生労働省「保険調剤の理解のために(令和8年度)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001713154.pdf