結論から書きます。令和8年度の調剤報酬改定は、点数の上げ下げよりも「評価の体系が組み替わった」改定です。後発医薬品調剤体制加算・かかりつけ薬剤師指導料・調剤管理加算・医療情報取得加算などがなくなり、地域支援・医薬品供給対応体制加算、調剤ベースアップ評価料、調剤物価対応料、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算などが新しくできました。薬局が最初に確かめるべきなのは、「新しい点数のうち届出が要るものを出したか」「なくなった点数をレセコンが算定し続けていないか」の2点です。

この記事では、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)、告示の調剤報酬点数表、留意事項通知(保医発0305第6号)をもとに、改定の全体像と点検の順番を整理します。個々の点数の細かな要件は、各テーマの記事で扱います。


1. 改定の全体像と施行の時期

令和7年12月24日の大臣折衝事項では、診療報酬の改定率は+3.09%(令和8年度・9年度の2年度平均。令和8年度は+2.41%)、各科の改定率のうち調剤は+0.08%とされました。薬価は▲0.86%です。

項目施行時期薬局への主な影響
薬価改定令和8年4月薬剤料と在庫の評価額が変わる
診療報酬(調剤報酬)改定令和8年6月基本料・加算・薬学管理料の組み替え
ベースアップ評価料・物価対応料の2倍化令和9年6月所定点数の100分の200で算定

改定の概要では、薬局の対象職員の賃上げとして令和8年度・9年度にそれぞれ+3.2%(事務職員等は+5.7%)のベースアップの実現を支援するとしています。賃上げのための点数は、算定するだけでなく賃金の改善を実際に行うことが前提です。

2. なくなった点数と新しくできた点数

改定の概要【調剤】の「調剤報酬の体系」から、薬局の算定に直接関わる主なものを並べます。

区分なくなったもの新しくできたもの・名前が変わったもの
調剤基本料の加算後発医薬品調剤体制加算、医療DX推進体制整備加算地域支援・医薬品供給対応体制加算(旧・地域支援体制加算)、電子的調剤情報連携体制整備加算、バイオ後続品調剤体制加算
調剤基本料の減算―門前薬局等立地依存減算(▲15点、新規開設の薬局が対象)
薬剤調製料の加算―かかりつけ薬剤師フォローアップ加算、かかりつけ薬剤師訪問加算
調剤管理料の加算重複投薬・相互作用等防止加算、調剤管理加算、医療情報取得加算調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算
薬学管理料かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料、在宅患者オンライン薬剤管理指導料訪問薬剤管理医師同時指導料、複数名薬剤管理指導訪問料
新設の評価料―調剤ベースアップ評価料(4点)、調剤物価対応料(1点・3月に1回)

調剤基本料そのものの区分の変更は区分の見分け方をまとめた記事で、地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績要件は加算の区分と実績の記事で詳しく扱っています。

3. 対人業務の評価はどう変わったか

かかりつけ薬剤師の評価は、「指導料として包括的に評価する形」から「実務を個別に評価する形」に切り替わりました。かかりつけ薬剤師指導料と包括管理料を廃止し、服薬管理指導料の中にかかりつけ薬剤師が行った場合の区分を設けたうえで、電話等によるフォローアップ(かかりつけ薬剤師フォローアップ加算)や残薬調整のための患家訪問(かかりつけ薬剤師訪問加算)を別に評価します。制度の変わり方はかかりつけ薬剤師の評価の記事にまとめています。

調剤管理料は、内服薬の日数の区分が「28日分以上」と「それ以外」の2つに簡素化され、調剤管理加算はなくなりました。重複投薬・相互作用等防止加算は廃止され、調剤時残薬調整加算と薬学的有害事象等防止加算に組み替えられています。

在宅では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔が「中6日以上」から「週1回」に見直され、医師と薬剤師が同時に訪問した場合や、複数名で訪問した場合の評価が新しくできました。在宅患者オンライン薬剤管理指導料は服薬管理指導料に一本化されています。

4. 判断材料:自局の点検チェックリスト

改定の後、自局が次の項目を確かめたかを点検してください。

  • 調剤基本料の区分を、改定後の基準(医療モールの集中率の計算を含む)で計算し直した
  • 区分が変わる場合、様式84で届け出た
  • 地域支援・医薬品供給対応体制加算を算定するなら、新しい区分で届け出た
  • 調剤ベースアップ評価料の届出をし、賃金の改善の計画を立てた
  • 調剤物価対応料を、3月に1回の算定としてレセコンに設定した
  • 在宅薬学総合体制加算2を算定するなら、新しい基準で届け出た
  • バイオ後続品調剤体制加算を算定するなら届け出た
  • 服薬管理指導料の注1(かかりつけ薬剤師)を算定するなら届け出た
  • 医療DX推進体制整備加算を算定していた薬局は、電子的調剤情報連携体制整備加算の扱いを確かめた
  • 廃止された点数(後発医薬品調剤体制加算、調剤管理加算、医療情報取得加算など)がレセコンから消えている
  • 薬局内の掲示とウェブサイトの掲載事項を、改定後の点数名に直した

5. 打ち手:点検の順番

手順1:体制の点数を先に確かめる

調剤基本料とその加算は、処方箋の受付1回ごとに効きます。月に数千回の受付がある薬局では、1点の差が月に数万円の差になります。まず基本料の区分、次に基本料の加算の順で、改定後の基準に照らします。

手順2:届出が要るものと要らないものを分ける

改定の概要【調剤】の「地方厚生局への届出と報告」では、新設の施設基準(ベースアップ評価料、地域支援・医薬品供給対応体制加算、在宅薬学総合体制加算2、バイオ後続品調剤体制加算、服薬管理指導料の注1)は届出が要るとしています。一方、調剤基本料は区分が変わる場合だけ、在宅薬学総合体制加算1は区分に変更がなければ届出は要りません。電子的調剤情報連携体制整備加算は、令和8年5月31日時点で医療DX推進体制整備加算を算定していた薬局は新たな届出が要らないとされています。各施設基準の届出の様式と手順は施設基準の届出の記事にまとめました。

手順3:薬学管理料の運用を直す

服薬管理指導料と調剤管理料は、点数だけでなく薬剤服用歴(薬歴)に残す内容も見直されています。調剤時残薬調整加算は、残薬に応じて7日分以上の調整をしたときが原則で、それ未満の場合はレセプトに理由を書く必要があります。新しい加算の要件は調剤管理料の記事で整理しています。

手順4:レセコンと掲示物を直す

レセコンのベンダーが改定に対応していても、施設基準の届出の有無は薬局ごとに設定が要ります。届け出ていない加算が自動で算定される、届け出た加算が算定されない、という設定の誤りがないかを、6月以降のレセプトで実際に確かめてください。

6. 落とし穴

  • 概要の資料だけで判断する。改定の概要は要点をまとめた資料です。算定の可否は、告示と留意事項通知の文言、疑義解釈資料で確かめます。疑義解釈は令和8年3月のその1から、9月25日のその13まで追加されています。
  • 算定日数の考え方を改定前のまま使う。例えば、28日分以上の処方を減数調剤で27日分以下にした場合の調剤管理料の区分は、疑義解釈資料(その7)で示されています。
  • 賃上げを伴わずにベースアップ評価料だけを算定する。施設基準は「対象職員の賃金の改善を実施するにつき必要な体制」です。算定と賃金の改善を対で管理してください。
  • 令和9年6月の切り替えを忘れる。ベースアップ評価料と物価対応料は、令和9年6月以降は所定点数の2倍になります。

7. まとめ

  • 令和8年度の調剤報酬改定は、令和8年6月施行です(薬価は4月施行)。
  • 後発医薬品調剤体制加算、かかりつけ薬剤師指導料、調剤管理加算などが廃止され、新しい加算・評価料に組み替えられました。
  • 新設の施設基準は届出をして初めて算定できます。届出の要否を1つずつ確かめます。
  • 点検は、体制の点数 → 届出 → 薬学管理料 → レセコンと掲示物、の順に進めます。
  • 算定の判断は、告示・留意事項通知・疑義解釈資料の文言で確かめます。

参考資料