薬局の時間外対応は、「なんとなく院長の携帯電話を伝えている」状態のままでは、地域連携薬局の認定要件やかかりつけ薬剤師指導料の算定要件を満たせません。 求められている内容は制度によって異なり、体制を書面にして、対応した記録を残すところまでが要件の一部です。この記事では、求められる内容、体制の決め方、記録の残し方を整理します。
1. どの制度が時間外対応を求めているか
地域連携薬局の認定要件
薬機法施行規則第10条の2第3項は、地域連携薬局の基準として、次を定めています。
- 第1号:開店時間外であっても、利用者からの薬剤及び医薬品に関する相談に対応する体制を備えていること
- 第2号:休日及び夜間であっても、調剤の求めがあった場合には、地域における他の薬局開設者と連携して対応する体制を備えていること
第1号は「相談への対応」、第2号は「調剤依頼への対応(他薬局との連携でも可)」であり、求められる内容が異なる点に注意が必要です。
かかりつけ薬剤師指導料等の算定要件
かかりつけ薬剤師指導料・服薬管理指導料1(かかりつけ薬剤師による分)などの算定では、休日・夜間を含む相談に応じる体制をとり、患者に開局時間外の連絡先を伝えることが要件に含まれます。かかりつけ薬剤師本人が対応するのが原則ですが、やむを得ず他の薬剤師が対応した場合は、内容をかかりつけ薬剤師と共有することが求められます。かかりつけ薬剤師指導料の算定要件の詳細は、かかりつけ薬剤師の要件と算定で整理しています。
| 制度 | 求められる内容 |
|---|---|
| 地域連携薬局(薬機法) | 相談対応体制(自局)+ 調剤依頼への連携体制(他薬局と連携可) |
| かかりつけ薬剤師指導料等(調剤報酬) | 患者への連絡先の周知、原則かかりつけ薬剤師本人が対応、他の薬剤師が対応した場合はかかりつけ薬剤師と情報共有 |
2. 体制の決め方
- 連絡手段を決める:薬局の電話を転送する、専用の携帯電話を用意する、当番の薬剤師の連絡先を患者に伝えるなど、自局の人員体制に合った方法を選ぶ
- 対応する薬剤師の輪番を決める:常時1人の薬剤師に依存すると、その薬剤師が対応できないときに体制が機能しなくなります。複数の薬剤師で輪番を組めるようにしておきます
- 他薬局との連携先を確保する(地域連携薬局を目指す場合):休日・夜間の調剤依頼に自局だけで対応できない場合に備え、地域の他の薬局開設者との連携(在庫の融通、調剤の代行など)をあらかじめ取り決めておきます
- 患者への周知方法を決める:薬局内の掲示、お薬手帳への記載、かかりつけ薬剤師契約時の説明など、患者が時間外の連絡先を実際に知っている状態を作ります
- 体制を書面化する:誰が、どの時間帯に、どの連絡手段で対応するかを、業務手順として文書に残します
3. 記録の残し方
時間外に対応した相談・調剤依頼は、通常の来局時と同じように、薬剤服用歴(薬歴)に記録します。記録には次の内容を含めます。
- 対応した日時(時間外であったこと)
- 相談・依頼の内容
- 対応した薬剤師
- 対応の結果(助言の内容、調剤の要否、受診勧奨の有無など)
- かかりつけ薬剤師が対応していない場合、かかりつけ薬剤師への共有の状況
地域連携薬局の更新(1年ごと)や、調剤報酬の算定に関する確認の際に、体制が実際に機能していたことを示す記録として使えます。記録が無いと、体制を整えていても「実際に運用されていたか」を示せません。
4. 小規模な薬局での運用
薬剤師が少ない薬局では、輪番を組むこと自体が難しい場合があります。その場合の考え方は次のとおりです。
- 地域連携薬局の要件(調剤依頼への対応)は、自局だけで完結させる必要はありません。 休日・夜間の調剤の求めがあった場合に、地域の他の薬局開設者と連携して対応する体制でも基準を満たせます。近隣の薬局と、あらかじめ連携の取り決めをしておくことが現実的な選択肢になります
- かかりつけ薬剤師指導料の算定は、かかりつけ薬剤師本人が対応するのが原則です。 薬剤師が1人しかいない薬局では、その薬剤師が休暇中などに時間外対応ができない期間が生じないよう、あらかじめ対応できない期間を患者に伝えておく、または一時的に他の薬剤師が対応する場合の情報共有の方法を決めておく、といった運用を検討します
- 転送電話やIP電話サービスを使えば、経営者本人が常に対応する必要はありません。 費用と運用負荷を比べて、自局の規模に合った連絡手段を選びます
体制を大きく変えなくても、まず「今の体制を書面にする」ことから始めると、不足している部分(連携先が無い、記録の様式が無いなど)が具体的に見えてきます。
5. 落とし穴
- 連絡先を伝えているだけで、実際につながらない:転送設定の不具合や、当番の薬剤師が不在で対応できないことがないよう、定期的に体制を確認します
- 対応した記録を残していない:時間外の対応も、通常の薬歴と同じ扱いで記録します
- かかりつけ薬剤師以外が対応した内容を共有していない:かかりつけ薬剤師指導料の算定要件では、情報共有までが前提です
- 地域連携薬局の連携先を確保しないまま申請する:休日・夜間の調剤依頼への連携体制(他薬局との取り決め)が整っていないと、認定基準を満たせません
6. まとめ
- 地域連携薬局は「相談対応体制」と「調剤依頼への連携体制」の両方、かかりつけ薬剤師指導料等は「連絡先の周知」と「情報共有」を求めている(求める内容が制度で異なる)
- 連絡手段・輪番・他薬局との連携先を決め、体制を書面化する
- 対応した内容は薬歴に記録し、日時・内容・対応者・結果・共有状況を残す
- 記録が無いと、体制を整えていても運用実績を示せない
参考資料
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第10条の2(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000100001