結論から書きます。服薬フォローアップ(調剤後も薬剤の使用状況を継続的に把握し、必要な指導を行う業務)は、薬剤師法25条の2第2項と薬機法9条の4第5項にもとづき、令和2年9月1日から薬剤師・薬局開設者の法律上の義務です。実施した記録は、施行規則にもとづき3年間保存する必要があります。報酬上は、服薬情報等提供料・かかりつけ薬剤師フォローアップ加算・調剤後薬剤管理指導料など、対象患者と提供先に応じて複数の算定項目が用意されています。

この記事は、e-Gov法令検索の薬剤師法25条の2・薬機法9条の4の条文、医薬品医療機器等法施行規則第15条の14の3、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(令和8年7月1日版)、告示「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別紙1-3 調剤報酬点数表」にもとづいています。


1. 服薬フォローアップの法的な位置づけ

薬剤師法25条の2は、1項で調剤時の情報提供・指導を、2項で調剤後の継続的なフォローアップを定めています。

第一項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない(薬剤師法25条の2第2項)

薬局開設者の側にも、同じ内容の義務が薬機法9条の4第5項に定められています。開設者は、その薬局の薬剤師に、調剤した薬剤を購入・譲り受けた者の使用状況を継続的かつ的確に把握させ、必要な情報提供・指導を行わせなければなりません。個人(薬剤師)と組織(薬局開設者)の両方に義務がかかっているのがこの規定の構造です。

いずれも令和元年の薬機法等改正(令和元年法律第63号)で新設され、令和2年9月1日に施行されました。 対面での調剤時指導(1項)と違い、2項・第5項は「調剤時のみならず、薬剤の服用期間を通じて」患者に関わることを求めている点が特徴です。

「必要があると認める場合」の考え方

条文は、フォローアップを行う場面を「調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合」としており、すべての患者に一律のフォローアップを義務付けているわけではありません。薬剤の特性(副作用の初期兆候の見極めが必要かなど)や患者の状態(自己管理が難しい、新規処方で不安があるなど)を踏まえて、薬剤師が個別に判断します。判断の基準そのものは条文・通知で数値化されていないため、自局の運用ルールを文書化し、判断の根拠を残しておくことが実務上の対応になります。

2. 記録の義務

医薬品医療機器等法施行規則第15条の14の3は、薬機法9条の4第1項・第4項・第5項にもとづく情報提供・指導について、記録事項と保存期間を定めています。

項目内容
記録事項情報提供及び指導を行った年月日、その内容の要点、行った薬剤師の氏名、受けた者の氏名及び年齢
保存期間記載の日から3年間

「行った」だけでなく「記録した」ことが確認できる状態にしておく必要があります。 薬剤服用歴(薬歴)システムに記載欄を設け、フォローアップを実施した日時・方法(電話、来局時の確認など)・内容の要点を都度入力する運用が現実的です。記録が薄いと、後述する報酬の算定要件(個別の確認・助言を行ったことの記載)も満たせなくなります。

3. 算定できる報酬

服薬フォローアップそのものに単独の点数があるわけではなく、対象患者・実施内容に応じて複数の算定項目に分かれています。 令和8年度改定時点の点数は次のとおりです(令和8年7月1日版の概要と告示にもとづく)。

算定項目点数対象・頻度
服薬情報等提供料130点保険医療機関の求めに応じ、患者の同意を得て服用薬の情報等を把握し、医療機関に文書提供。月1回
服薬情報等提供料2イ・ロ・ハ各20点薬剤師が必要性を認めて実施。イ:医療機関へ、ロ:リフィル処方箋調剤後に処方医へ、ハ:介護支援専門員へ。月1回
服薬情報等提供料350点入院前の患者について、医療機関の求めに応じて服用薬を一元的に把握し、必要に応じて持参薬整理。3月に1回
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点服薬管理指導料1のイ・2のイ(かかりつけ薬剤師)を算定する患者のうち、直近6月以内に外来服薬支援料1等を算定した人が対象。電話等で服薬状況・残薬状況を確認。3月に1回
調剤後薬剤管理指導料60点糖尿病患者・慢性心不全患者が対象。施設基準の届出が必要。調剤後に電話等で服用状況・副作用の有無を確認し、処方医へ文書で情報提供。月1回

服薬情報等提供料の詳しい算定要件は服薬情報等提供料と医療機関への報告、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算の詳しい要件はかかりつけ薬剤師の要件と算定で整理しています。

算定できない実施方法

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算の告示・通知は、「一律の内容のメールの一斉送信」や「アプリで定型の設問に答えてもらうだけで個別の確認・助言を伴わないもの」は算定の対象にならないとしています。調剤後薬剤管理指導料も、電話等での個別確認と、その後の指導の継続実施、処方医への文書提供のすべてを行うことが要件です。患者ごとの状態に応じた個別のやり取りであることが、記録上も確認できる必要があります。

4. 進め方の実務フロー

  1. 対象患者を選ぶ。 新規処方、用法用量の変更、副作用のリスクがある薬剤の処方など、フォローアップの必要性を薬剤師が個別に判断します。
  2. 実施方法を決める。 電話、次回来局時の確認、対面訪問など、患者の状態に合った方法を選びます。
  3. 確認・指導を行う。 服薬状況・残薬状況・副作用の有無を確認し、必要な指導を行います。定型の設問だけで終わらせず、個別のやり取りを残します。
  4. 記録する。 実施日時・方法・内容の要点を薬剤服用歴等に記載します(施行規則第15条の14の3の記録事項)。
  5. 医療機関に情報提供する場合は文書化する。 服薬情報等提供料等を算定する場合は、文書による提供が要件です。
  6. 算定要件を確認して算定する。 対象患者・算定回数の上限(月1回、3月に1回など)を確認します。

5. よくある落とし穴

  • フォローアップと算定を同一視する。 法律上の義務としてのフォローアップは、報酬の算定有無にかかわらず行う必要があります。「点数が付く患者だけ実施する」運用は、義務の趣旨と逆行します。
  • 記録が「実施した」ことしか示さない。 施行規則が求める記録事項(年月日・要点・薬剤師の氏名・受けた者の氏名及び年齢)を満たしているか、薬歴システムの入力項目を点検してください。
  • 一斉送信・定型アプリだけで終える。 個別の確認・助言を伴わない一律の情報発信は、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算等の算定要件を満たしません。
  • 算定できる項目を把握していない。 対象患者や実施内容によって算定項目が異なります。同じ月に重複して算定できない組み合わせもあるため、算定前に要件を確認してください。

6. まとめ

  • 服薬フォローアップは、薬剤師法25条の2第2項・薬機法9条の4第5項にもとづく法律上の義務です(令和2年9月1日施行)。
  • 記録は、年月日・要点・薬剤師の氏名・受けた者の氏名及び年齢を記載し、3年間保存します(施行規則第15条の14の3)。
  • 対象患者・実施内容に応じて、服薬情報等提供料1〜3、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算、調剤後薬剤管理指導料などが算定できます。
  • 一律の一斉送信や定型アプリの回答だけでは、算定要件を満たしません。

参考資料