結論から書きます。健康サポート薬局は、厚生労働大臣が定める基準(平成28年厚生労働省告示第29号)に合う薬局が、都道府県知事等に届け出て表示できる制度です。ただし、令和7年の薬機法改正により、令和9年5月20日から都道府県知事が認定する「健康増進支援薬局」に変わり、認定は1年ごとの更新になります。いまから届出を検討する薬局は、現行の8項目の基準と、施行後の認定基準の両方を見て準備するのが現実的です。とくに、研修修了薬剤師の数と、関係機関と連携した健康増進支援活動の実績が、新しい基準で重くなります。

この記事は、厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(薬生発0212第5号、平成28年2月12日)、健康サポート薬局に関するQ&A(その3、平成29年12月25日)、厚生労働省医薬局長通知(医薬発0630第1号、令和8年6月30日)と、「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」の資料にもとづいています。


1. 制度の位置づけと現状

健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加えて、地域住民の主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能(健康サポート機能)を持つ薬局です。平成28年4月1日に基準告示が適用され、届出は平成28年10月1日から始まりました。

項目内容
根拠薬機法施行規則と基準告示(平成28年厚生労働省告示第29号)
手続き薬局の所在地の都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)への届出
有効期間定めなし(基準に合わなくなれば表示を取りやめる)
確認都道府県等が、一斉監視指導や許可更新の立入検査の際などに基準への適合を確認する
数3,232件(令和6年9月30日時点、厚生労働省の検討会資料)

届出制なので、厚生労働省のQ&A(平成29年12月25日)は、「厚生労働大臣認可」「都道府県知事認定」のように個別に認められた薬局だと誤解させる表示を不適切としています。一方、通知は、薬局の外側の掲示に「厚生労働省基準適合」と併せて表示することは差し支えないとしています。

2. 現行の基準(8項目)

基準告示の大項目は8つです。薬生発0212第5号の通知が、満たすべき事項と届出に添付する書類を示しています。

2-1. かかりつけ薬局としての基本的機能

基準求められること
かかりつけ薬剤師の選択患者がかかりつけ薬剤師を選べる業務体制を手順書に定め、薬剤師の氏名・勤務日・勤務時間を示した勤務表を薬局内で提示する
服薬情報の一元的・継続的把握受診しているすべての医療機関と、要指導医薬品等を含む服用薬を把握し、薬剤服用歴に記録する
服薬指導とフォローアップ残薬の確認と解消、服薬状況・体調変化の確認を毎回行う
お薬手帳の活用意義と使い方を説明し、複数冊を持つ人には集約に努める
かかりつけの普及かかりつけ薬剤師・薬局の意義と選び方を説明し、持つよう促す
24時間対応開店時間外も電話相談等に対応し、24時間相談できる連絡先を文書で渡す
在宅対応直近1年間に在宅患者への薬学的管理・指導の実績がある
疑義照会等疑義照会と、必要に応じた副作用等の情報提供・処方提案に取り組み、医療機関への情報提供の文書様式を作る

2-2. 健康サポート機能

基準求められること
地域の連携体制受診勧奨と連携機関の紹介の手順を定め、医療機関・地域包括支援センター・介護事業所・訪問看護ステーション・健診や保健指導の実施機関・市区町村保健センター等を載せた紹介先リストを作る。紹介時は同意を得て紹介文書で情報を提供する
関係団体との協力地域の薬剤師会等と連携し、行政や医師会等が行う健康の保持増進の事業に積極的に参加する
研修修了薬剤師の常駐研修を修了し、一定の実務経験(薬局の薬剤師として5年以上)を持つ薬剤師が常駐する
相談窓口パーテーション等で区切った、個人情報に配慮した相談窓口
表示外側に健康サポート薬局である旨と相談を積極的に行っている旨を掲示し、内側に取組の具体的な内容を提示する
要指導医薬品等の取扱い基本的な48薬効群を原則として供給し、衛生材料・介護用品等も扱う。受診の妨げにならないよう受診勧奨の場面を手順書に定める
開店時間平日は連続して開局し、土曜日か日曜日のどちらかに4時間以上開局する。平日は午前8時〜午後7時の間に8時間以上が望ましい
健康サポートの取組相談の内容を記録して3年間保存する。薬の相談会や健診の受診勧奨などの取組を積極的に行い(月1回程度が望ましい)、薬剤師会等を通じて発信し、啓発ポスターの掲示やパンフレット配布に協力する

通知は、基準告示に定められた取組について過去1年間の実績を確認できるよう、資料を薬局に保存することも求めています。

3. 研修修了薬剤師は何人必要か

基準は人数ではなく「常駐」で決まっています。厚生労働省のQ&A(平成29年12月25日)は、開店時間内は常時、研修修了薬剤師が薬局内で勤務していることを求めています。したがって、必要な人数は開局時間とシフトで決まります。

人数を見積もるときは、次の順に確かめます。

  1. 1週間の開局時間の合計を出す
  2. 研修修了薬剤師1人あたりの週の勤務時間と比べる。開局時間の方が長ければ、1人では常駐を満たせない
  3. 休暇・研修・急な欠勤の日に、誰が研修修了薬剤師として入るかを決める。代わりがいなければ、その日は基準を満たせない

夜間を含めて長時間開局している薬局については、研修修了薬剤師を確保できるまでの間に限り、次の対応をとれば、平日は午前8時〜午後7時の間の連続した8時間、土曜日か日曜日のどちらかに4時間の勤務でよいとされています。

  1. 研修修了薬剤師がいない時間帯も、相談に対応できるよう研修修了薬剤師と速やかに連絡を取れる体制をつくる
  2. 研修修了薬剤師が勤務している時間帯を、薬局の内外の見やすい場所に掲示する
  3. 薬剤師に健康サポートの研修を受講させ、開店時間中の研修修了薬剤師の確保に努める

研修の修了証には有効期限があり、届出には有効な修了証と勤務体制がわかる資料を添付します。研修の提供者が要件を満たしていないとわかった場合は修了証が無効になり、受け直しが必要です。

4. 地域連携薬局との違い

項目健康サポート薬局地域連携薬局
手続き届出都道府県知事の認定(1年ごとに更新)
重点地域住民の健康の保持増進の支援(相談、受診勧奨、関係機関の紹介)入退院時の情報共有、在宅医療など、他の医療提供施設との連携
在宅直近1年間に実績がある月平均2回以上(施行規則第10条の2)
医療機関への報告・連絡実績の回数の定めはない月平均30回以上
薬剤師研修修了薬剤師(実務5年以上)の常駐常勤の半数以上が1年以上継続勤務、常勤の半数以上が地域包括ケアシステムに関する研修を修了
要指導医薬品等基本的な48薬効群の供給求められない
麻薬・無菌製剤処理求められない麻薬小売業者の免許、無菌製剤処理の体制

地域連携薬局の基準は地域連携薬局の認定要件と申請の流れで、がんの専門的な薬学管理を担う認定は専門医療機関連携薬局の認定要件で整理しています。

5. 健康増進支援薬局への移行(令和9年5月20日施行)

決まったこと

  • 令和7年5月21日に公布された薬機法等の改正法(令和7年法律第37号)で、健康サポート薬局の届出制度は、法令上の名称を「健康増進支援薬局」とした都道府県知事の認定制度になりました(改正後の薬機法第6条の4)。
  • 認定は1年ごとに更新を受けなければ効力を失い、認定を受けていない薬局が「健康増進支援薬局」やまぎらわしい名称を使うことは禁止されます。
  • 基準を定めた整備省令(令和8年厚生労働省令第110号)は令和8年6月30日に公布され、令和9年5月20日から施行されます。施行に合わせて、健康サポート薬局の届出や表示に関する施行規則の規定は削除されます。
  • 施行日より前でも、健康増進支援薬局の認定の申請は、改正後の施行規則の様式で都道府県知事に提出できます(整備省令附則第3条第2項)。

新しい認定基準(施行規則第10条の4)

医薬発0630第1号の通知が示す基準を、現行の基準と並べます。

分野健康増進支援薬局の基準現行の健康サポート薬局との違い
構造設備座って情報提供・指導を受けられる、間仕切り等で区切られた相談窓口と、相談内容の漏えい防止に配慮した設備。高齢者・障害者等が利用しやすい構造「座って」「漏えい防止」「バリアフリー」が明記された
連携機関医療提供施設、市町村保健センター、地域包括支援センター、介護サービス事業者、その他健康の保持増進の支援を行う行政機関連携先が省令で定められた
受診勧奨・紹介必要に応じて受診を勧め、連携機関を紹介する体制。勧奨・紹介の後に相談内容と薬剤の使用情報を提供し、記録を保存した実績情報提供の「実績」が求められる
活動の報告行政や薬剤師会等の関係団体に、健康増進支援活動の実施状況を継続的に提供している新しい項目
相談体制開店時間外の相談に対応する体制。相談内容と健康増進支援活動を記録・保存する体制現行の24時間対応・記録に近い
利用者の支援利用者が自身の健康情報を理解し活用できるよう支援する体制新しい項目
供給要指導医薬品、一般用医薬品、衛生材料、介護用品を提供する体制現行と同じ方向
活動の実績過去1年間に、行政・医療提供施設・関係団体と連携して健康増進支援活動(日常の相談対応を除く)を行った実績連携した活動の実績が求められる
情報発信住民や行政・関係団体に、活動の利用方法と実施内容を提供している現行の周知に近い
薬剤師常勤の薬剤師の半数以上が1年以上継続勤務。常勤の薬剤師の半数以上が一定期間以上の実務経験を持ち、健康の保持増進の支援に関する研修を修了「常駐」から「常勤の半数以上」に変わる

通知が挙げる基準の中に、在宅の実績は含まれていません。厚生労働省の検討会の議論の整理(令和7年8月29日公表)でも、健康増進支援薬局は在宅の相談対応に焦点を当て、実際の在宅対応までは求めない形で地域連携薬局と差をつける案が示されていました。実務経験の具体的な期間や研修の内容は、通知の要約からは確かめられなかったため、省令の本文と都道府県の手引きで確認してください。

6. いま届出を考える薬局の進め方

  1. 研修修了薬剤師を数える。現行の基準では開局時間中の常駐、施行後は常勤の半数以上の修了が基準です。施行後を見据えるなら、常勤の半数を目標に受講計画を立てます。
  2. 連携の実績を記録し始める。受診勧奨や関係機関の紹介をしたら、紹介文書の写しと、その後の情報提供の記録を残します。施行後の認定では「実績」が問われます。
  3. 関係機関と組んだ活動を1年分ためる。薬の相談会や健診の受診勧奨などを、市町村や地域包括支援センター、薬剤師会と一緒に行い、概要・日時・場所・参加人数を記録します。日常の相談対応は、新しい基準の「活動の実績」には含まれません。
  4. 相談窓口と掲示を整える。座って相談でき、会話が漏れない窓口にしておけば、現行と施行後の両方の基準に合います。
  5. 都道府県の案内を確認する。施行前の申請の受付時期、様式、手数料、既に届け出ている薬局の扱いは、都道府県の案内で確認します。

7. 落とし穴

  • 研修修了証の有効期限切れ。有効な修了証がなければ常駐の要件を満たしません。更新の時期を一覧で管理します。
  • 在宅の実績がない。現行の基準では、直近1年間に在宅患者への薬学的管理・指導の実績が必要です。
  • 健康サポートの取組が薬局の宣伝になる。厚生労働省のQ&Aは、地域の事業での講演は医薬品の適正使用等に関するものを想定しており、薬局の宣伝を主とする内容であってはならないとしています。
  • 記録がない。相談記録の3年間の保存と、過去1年間の取組の実績資料がなければ、立入検査で基準への適合を示せません。施行後は1年ごとの更新で毎年確かめられます。
  • 施行後も「健康サポート薬局」の表示を続ける。施行後に名乗れるのは、認定を受けた健康増進支援薬局です。看板やホームページの表示を切り替える時期も計画に入れてください。

8. まとめ

  • 健康サポート薬局は、基準告示の8項目を満たして都道府県知事等に届け出る制度で、令和6年9月30日時点で3,232件です。
  • 研修修了薬剤師(薬局の薬剤師経験5年以上)が開店時間内は常に薬局内にいることが求められ、必要な人数は開局時間で決まります。
  • 地域連携薬局は認定制で、医療機関への報告・連絡と在宅の実績が回数で求められる点が違います。
  • 令和9年5月20日から、健康増進支援薬局の認定制度(1年ごとの更新)に変わります。施行日前から申請できます。
  • 新しい基準では、関係機関と連携した活動の実績と、常勤薬剤師の半数以上の研修修了が求められます。

参考資料