薬剤師不在時間は、在宅対応など、やむを得ず一時的に薬剤師が薬局を離れる時間を指し、1日4時間または薬局の開店時間の2分の1のいずれか短い時間が上限です。在宅対応が増えるほど、この制度の理解とシフトの組み方が重要になります。

この記事では、薬剤師不在時間の定義、1日の上限、掲示・記録の義務、シフトの組み方を、厚生労働省の通知にもとづいて整理します。


薬剤師不在時間とは

薬剤師不在時間とは、薬局の開店時間のうち、調剤に従事する薬剤師が、やむを得ず、かつ一時的に、薬局以外の場所で業務を行うために不在となる時間です。

当たる例当たらない例
緊急の在宅対応学校薬剤師の業務など、あらかじめ予定されている定期的な業務
急遽決まった退院時カンファレンスへの参加私的な外出

「やむを得ず、かつ一時的に」という条件がポイントです。定期的に発生することが分かっている業務(学校薬剤師の業務など)は、あらかじめシフトの体制を組んで対応するべきものとされ、薬剤師不在時間の枠組みでは扱えません。既に予定が分かっている業務まで不在時間として扱ってしまうと、実際に緊急対応が必要になったときの余地が上限内に残らなくなります。

1日の上限:4時間または開店時間の2分の1

1日の薬剤師不在時間は、4時間、または薬局の1日の開店時間の2分の1のいずれか短い時間を超えることができません。

開店時間薬剤師不在時間の上限
8時間以上(例:9時間)4時間
8時間未満(例:6時間)開店時間の2分の1(例:3時間)

開店時間が長い日ほど上限は4時間に固定され、開店時間が短い日は、その半分が上限になります。在宅対応の予定を組む際は、その日の開店時間を踏まえて、上限を超えないかを確認してください。

不在時間中に必要な掲示・記録・体制

薬剤師不在時間の間、薬局は次の対応が必要です。

掲示(薬局の内側・外側の見やすい場所に)

  • 調剤に応じられない旨
  • 不在の理由
  • 薬剤師の帰局予定時刻

記録(薬局の管理帳簿に)

  • 不在となった理由
  • 不在の時間
  • 不在時間中の薬局の状況

体制

  • 調剤室を閉鎖する
  • 管理薬剤師と従業員が連絡を取れる体制を維持する
  • 調剤が必要な患者には、近隣の薬局を案内するか、薬剤師が速やかに戻れるようにする

薬剤師が不在になる可能性がある場合は、都道府県などへ事前に変更届を提出しておく必要があります(不在が発生するたびの届出は不要です)。届出の書式や提出先は都道府県・保健所ごとに案内されていることが多いため、在宅対応を新たに始める際は、自局を管轄する保健所の窓口で確認してください。

掲示や記録は、実際に不在時間が発生してから初めて用意するのではなく、あらかじめ様式を整えておくことが大切です。掲示物のひな形(不在の理由・帰局予定時刻を書き込む欄を用意したもの)と、管理帳簿の記録欄を先に作っておけば、在宅対応の依頼が急に入ったときも、その場で慌てず対応できます。

在宅対応が増える中でのシフトの組み方

在宅訪問が増えると、薬剤師不在時間が発生する頻度も増えます。上限を超えないようにシフトを組むには、次の点を整理します。

  1. 在宅対応の予定を、あらかじめ把握できる範囲で一覧化する(緊急対応がどの程度の頻度で発生しているかも記録する)
  2. 開店時間ごとに、その日の不在時間の上限(4時間、または開店時間の2分の1)を確認する
  3. 不在時間中に薬局に残る薬剤師・従業員の体制(連絡手段、近隣薬局への案内の準備)を決めておく
  4. 不在時間が上限に近づく日は、在宅対応の担当を複数の薬剤師で分散させる

薬剤師が1人だけの薬局では、在宅対応のたびに不在時間の上限に達しやすくなります。薬剤師を複数人配置できる体制にするか、在宅対応の件数と時間帯を調整し、上限を超えない範囲で運用してください。

在宅対応の依頼は、患者の状態や医療機関からの連絡のタイミングに左右されるため、完全に予定通りにはいきません。それでも、過去の在宅対応の件数・時間帯を記録しておくと、依頼が集中しやすい曜日や時間帯の傾向が見えてきます。傾向が分かれば、その時間帯だけ薬剤師を厚めに配置する、近隣の薬局とあらかじめ連携方法を確認しておくといった備えができます。

実行時につまずきやすいところ

定期的な業務を「不在時間」として扱ってしまう。 学校薬剤師の業務のように、あらかじめ予定が分かっている定期的な業務は、薬剤師不在時間の枠組みではなく、通常のシフトとして体制を組む必要があります。

掲示や記録を、不在のたびに用意していない。 不在時間が発生してから慌てて掲示を作ると、対応が後手に回ります。掲示の文言や記録の様式は、あらかじめひな形を用意しておいてください。

上限時間を、開店時間の長さを考えずに管理する。 上限は開店時間によって変わります。曜日ごとに開店時間が異なる薬局は、曜日ごとに上限を確認してください。

変更届の提出を、不在が実際に発生してから行う。 薬剤師が不在になる可能性がある体制に変わる場合は、事前に届出を済ませておく必要があります。在宅対応を新たに始める、担当薬剤師を増やすといった体制の変更があるときは、届出の要否を早めに確認してください。

まとめ

  • 薬剤師不在時間は、在宅対応など、やむを得ず一時的に薬剤師が薬局を離れる時間
  • 1日の上限は、4時間または開店時間の2分の1のいずれか短い時間
  • 不在時間中は、掲示(調剤不可の旨・理由・帰局予定時刻)、記録(理由・時間・薬局の状況)、体制(調剤室の閉鎖、連絡手段の確保)が必要
  • 在宅対応が増える薬局は、シフトを分散させ、上限を超えない体制を整える

参考資料

  • 厚生労働省「薬剤師不在時間に関する省令改正」に係る通知(薬生発0926第10号、平成29年9月26日)
  • 大分県「薬剤師不在時間に係る届出について」(定義・具体例・掲示・記録の内容):https://www.pref.oita.jp/soshiki/12610/huzai-todokede.html